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雪降る君に   作者: ハル
9/12

2(3)

「……委員会長引いたな」



私は急ぎ足で教室に戻っていた。



部活には入っていないので、教室に置いていた荷物を取って帰るつもりだ。



廊下は夕日が窓から差して黄金色に照らされている。



グラウンドから野球部の掛け声が聞こえた。



見えてきた部屋には明かりがついていなかった。



だれもいないのだろう。



入って私は窓際の自分の席を見て固まった。



私の席には何も異常はない。



しかし、その隣の席に持ち主が寄りかかって窓の外を見ていたのだ。



「五十嵐、残ってたのか」



私は努めて何気ない口調で言った。



廊下での一件の後何度か誤ったのだが、彼は

気にするなと特に怒った様子もなく、こちらから蒸し返すわけにもいかなくなっていた。



「……あぁ、武藤か」



寒くないのか、五十嵐はワイシャツ姿だ。



それにしてもやつれていないか?



一応いい顔なのにそんな老けたら、女子共が

泣くぞ。



「そろそろ帰るかな」



「む、そうか。気をつけてな」



朝関わらないと言ったばかりだが、ヨボヨボの五十嵐はいつ車に轢かれてもおかしくなさそうで、ついお節介をしてしまった。



五十嵐も同じことを考えていたのかクスッと笑って、制服を着直すと教室を出て行った。



私はその姿が見えなくなってもしばらく立ち尽くしていた。



世界は案外狭いのかもしれない。



五十嵐の後ろ姿は、いつか見た変態だった。



確実な証拠はまだない。



だが、今まで誰とも合わなかったあの芝原で

ワイシャツの変態に遭遇したのと、五十嵐が

転校してきた時期が重なっている。



私は自分の席を通り過ぎ、五十嵐が見ていた窓を見た。



さっきまで夕焼けの中降っていた雪が止んでいた。









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