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「気にすんなよ。あいつ変わってるんだ」
呆然と上がっていた手を下ろし、
俺は声をかけてきたほうを見た。
前の席からこちらに体を捻じっている
坊主頭がいた。
さっき武藤が名前を言っていたような……
「そうなのか。えっと、上野だっけ?」
「ああ、涼太でいいよ。俺、野球部。
五十嵐はどうすんの?」
「んー、ドアノブ?」
「なんじゃそりゃ」
俺は上野と一緒に教室を出た。
女子がずっとみてきているのには
気づいていたが、今のところは上野と
話していれば大丈夫そうだ。
だがこの時期は男でも、
女でも気をつけなけばならない。
上野の話を聞きながら、
俺はため息をついた。
「…暑い」