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Opening…
何処にでもあるような、閑静な住宅街の外れ。
意識していなければ気付かないような小さな通りの、ともすれば見逃してしまいそうなその奥に、その店はあった。
何処か古ぼけたような、時代に取り残されたような、懐かしいアンティーク調の外観の小さな建物。
扉の磨り硝子に筆記体で刻まれた「Soie」の文字。鼻先をふわりふわりと掠めていく珈琲の香り。
ゆっくりと開かれる扉。
かろろん。ベルの音が響く。
「いらっしゃいませ」
緩やかな笑みを浮かべて、カウンターの向こうの女性は笑っていた。
喫茶ソイエ。それは、優しい気持ちになれる場所。
雨は、未だやまない。