状況と処遇
関係者の話を聞いての事実確認は終わった。後は神様の意向だ。話を聞く限り、美里は既に死んでいるようだから、いつもの手続きをしたってかまわないだろう。でも美里は自分の名前を覚えているんだ。その辺りが神様の考えに影響してくるかもしれない。神様って割と面白いことがお好きらしいからな。
——では、神様。美里とやらの処遇はどういたしますか?
——いつも通りにするべきか、それとも何か考えでもおありで?
上司と悪魔の一人がいう。僕やほかの人たちも、それから美里も、一番気になっていたことだ。お二人の神様は顔を見合わせて、それから僕たちに告げられた。
——そなたらは美里の過去をみたかの?
——いいえ、みておりません
——名前を覚えているという時点で、手続きは後回しにいたしましたから。
一番下っ端の僕がこの場で発言するのはどうかと思ったけど、でもこの場にいる中で僕が美里の手続きを中断した張本人だ。僕が答えるべきだろうと思って、天使——もちろん僕よりも階級が上だ、直接の上司ではないけど——に付け加えるように発言した。そうか、と神様がいわれる。手続きを後回しにしたことをおこられるだろうか、神様の聞き方じゃまるで…
——美里はまだ死んではおらぬのだ。
やっぱり。神様の話し方じゃ、まるで美里が死んでいないみたいだったと思ったら、本当だったなんて。死者以外がここに来ることなんてあったんだな…そんな風に静かに驚いていたら、神様はさらに驚くべきことを言われた。
——しかし美里が死に近い状態にあることは否定できん。
「死に近い状態…?」
——眠り続けておるということよ。植物状態とかゆうたか?
そのことを知っていた神様以外のすべてが絶句した。死者じゃないのにここに、あの世にきた。ただし植物状態。だってそれってつまり、幽体離脱とか、そういうことなんだろう?そんな人物——幽霊というべきか——を目にしたことがあるやつなんてそうそういないはずだ。僕だって、上司たちだってすごく驚いている。でも美里にとっては、驚きとかそれどころじゃなかったようで、呆然としていた。思わず僕は神様に尋ねた。
——では、美里はどうなるというのですか?
——どうもせぬわ。いや、どうにもできぬといったところかの。
——それは、どういうことで?
——妾たちではどうにもできぬということよ。美里自身がどうしたいか考え、行動するしかなかろうて。
神様はそういってから、美里を見た。美里は未だ呆然としていて、僕らに考えを話せるような状況じゃなさそうだ。当たり前か。死んでないといわれてほんの少しほっとしたのに、その直後に植物状態になってると告げられるなんて。
——美里をしばらく休ませてやるといいじゃろう。
——そうですね。そうしましょうか。
神様はそういってから、お二方そろって踵を返した。お帰りになるのだろう。美里の面倒は誰が見るのだろうか。悪魔の奴らは面倒見ようなんてしないだろうしな、必然的に僕たち天使が面倒を見るのだろう。
「私、どうすればいいの…?」
美里がぽつりとつぶやく。美里はまるで迷子の子供のような瞳をしていた。どうすればいいのかわからずに、ただ立ち尽くして助けを待ってる、そんな子供。僕ら天使はそんな人を見捨てられない。いや、だから天使なんだけどね。親切とか偽善とか、色々いわれたりはするけど、僕たちは結局人という生き物が見捨てられない、ただそれだけだ。
——しばらく、ここにいるといいよ。神様もそうおっしゃられた。ですよね?
——ああ。私たち天使で面倒を見よう。
「私、ここにいてもいいの?」
——もちろん。ゆっくりどうするか、考えればいいよ。
僕と上司はそういって、美里を部屋に連れて行った。一番始めに美里を案内した部屋だ。それから僕は、美里のことを上司に任せて仕事に戻ることにした。そろそろ交代の時間だったからだ。僕も上司も普段の仕事がある。美里には悪いが、美里にばかり構ってはいられなかった。
——美里の面倒は、天使の中で手の空いてる者がみることとする。
——わかりました。僕は休憩ごとに顔を出すつもりですが、食事などはほかの天使に任せても?
——その辺りは私が手配しておこう。天使全体に連絡を回すことにする。
——はい。
僕は上司とそれだけのやり取りをし、仕事に戻った。休憩がなくなってしまったけども、仕方ない。それにしても、またあの行列をさばかなくてはいけないのか。僕は若干憂鬱になりながらも、交代の天使から仕事を引き継いだ。
間があいてすいません!なかなかしっくりこなくて…
後半部分が大分変わりました。
しかも前回3話目で一応完結でしたが、今回はまだ続きます。
早めに続きをアップできるようがんばります!