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短編小説・完結済み小説

君と出逢って同じ道を歩み、 君が死んでお互いの道を歩む。

作者: 尖角

俺は窮屈な日々に、飽き飽きしていた。


毎日が同じ繰り返しで、自由に動く時間がない。



俺は退屈な日々に、飽き飽きしていた。


毎日が同じ繰り返しで、何をしてもつまらない。



俺はそんな世界が嫌いだった。


――なぜ、この世に生まれたのか?


俺は毎日そんなことを考えていた。



“自由”なんて言葉は、“人が不自由”だから生まれたんだ。


俺はそう思っていた。 だって、そうじゃないと・・・。



そうじゃないと、そんな言葉は生まれないと思っていた。


俺は、“不自由”であるからこそ“俺でいられる”と思っていた。


だけど、それは違ったみたいだ。 俺は勘違いをしていたみたいだ。



俺の世界は君と出逢ってがらりと変わった。


まるで、世界が180度回転したみたいに、俺の見るものは変わった。



今まで当たり前に見えていた服屋が、君と行くことで意味のある店になった。


友達と何気なく遊びに行っていたカラオケ屋が、君と行くことで思い出の欠片(カケラ)となった。



そんな日々が俺には幸せだった。 俺達には幸せだった。


だけど、君は病気に。 医者に言われたのは「余命半年」という言葉。



「さよなら」「大好きだったよ」 君は何度も何度も繰り返した。


まだ死んでないのに。 絶対に死ぬとは限らないのに・・・。


だけど、現実は起きた。 医者の言うとおりになってしまった。



余命半年―――宣告されてからちょうど半年後に君は入院した。


そして、そのまま見送りもなしに、君は逝ってしまった。



大好きだったさ、俺の方も。


誰よりも大好きだったさ、君のことが。



だけど、君はもういない。 


俺が「サヨナラ」を伝える前に君は逝ってしまった。




元に戻らない君との関係を思い出しては、泣きたくなる。


そんな毎日が嫌なんだ。 君がいない毎日が嫌なんだ。


だけど、元には戻れない。 時間は、元には戻せない。


だから、諦めるしかないのか? 思い出と共に生きるしかないのか?



だけど、俺には君が残して行った宝物がある。


――君が残した唯一の宝物、それが俺達の子供。



確かに思い出も宝物さ。 だけど、子供の方が大切だ。


だって、俺達2人の子供がいれば、いつでも君を想うことができる。



毎日見ることのできる笑顔が、昔の君の笑顔を(よみがえ)らせる。


だから俺は、“泣きたくなる今という現実”を泣かずに堪えることができている。


それは、大好きな君の面影が残っているから。 君の子供は君にそっくりだから。


だから、俺は泣かないで今を生きている。 俺達2人の子供と共に今を生きている。



だから、こっちが落ち着いてから、俺はそっちに行くことにするよ。


それまで、君は俺達を見守っていてくれよ。 ずっと傍にいてくれよ。



俺が辛そうな時は、何も言わなくていいから、近くで支えていてくれ。


俺が悲しそうな時は、何もしなくていいから、ただ一緒にいてくれ。



そうしてくれれば、俺はこれからを生きていくことができる。


君の姿が見えなくても、見れなくても、 俺は懸命に生きることができる。



だから、俺が死んだ時は、「頑張ったね」と言ってほしい。


笑顔で迎えて、ただ一言そう言ってほしい。 そうすれば・・・。



そうすれば、悲しみを忘れることができるから。


君がいなかった悲しみを乗り越えることができるから。



そして、来世でも一緒に楽しく暮らせると思うから。


だから、またいつか逢う日まで、お互いの道を―――――。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごく心の温まる詩でした! 世界ではよくあることかもしれないですが、 短い文章で表すには難しいことだと思います。 [一言] 次の作品を期待していますね!
2012/06/04 21:48 退会済み
管理
[一言] 胸がキュッと熱くなりました(;_;) 短い言葉・文章でこれだけ心に響くものを表現できるなんて、素晴らしいと思います。 感動的な詩をありがとうございました。
2012/05/18 00:03 退会済み
管理
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