表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解体屋、異世界を更地から救う ~俺の分別スキルが魔王の遺跡をリサイクルする~  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/22

第二十一章 故郷の記憶

ある夜、拓海は一人で月を見上げていた。


 ギルドの屋上。王都の喧騒は遠く、夜風が心地よく吹いている。


 ふと、日本での生活を思い出した。


 解体現場の朝。缶コーヒーの匂い。重機のエンジン音。先輩たちの怒鳴り声。汗と埃にまみれた一日の終わりに飲むビールの味。


 あの崩落事故の日。何が起きたのか。自分は本当に死んだのか。あの世界では、どう報道されたのか。誰かが悲しんでくれただろうか。


「考え事?」


 声がして、振り返ると、シルフィが浮かんでいた。


「ああ。少しな」


「どんな?」


「……昔のことを、思い出していた」


 シルフィは、拓海の隣に降り立った。


「前の世界のこと?」


「ああ」


「どんな世界だった?」


「……魔法はなかった。代わりに、機械がたくさんあった。空を飛ぶ乗り物とか、世界中の人と話せる道具とか」


「すごいね」


「そうかもな。でも、根っこは同じだった。人が生きて、働いて、笑って、泣いて。古いものが壊されて、新しいものが作られて。その繰り返し」


 拓海は、月を見上げた。


「帰りたいか、と聞かれることがある」


「……」


「正直、分からない。あの世界には、思い出がある。でも、この世界にも——」


 拓海は、言葉を切った。


「——居場所が、ある」


「そう」


 シルフィは、静かに微笑んだ。


「私は、たくみがここにいてくれて、嬉しい」


「……ありがとう」


「だって、たくみがいなかったら、私の森は、汚れたまま放置されてた。私も、消えてたかもしれない」


「……」


「たくみは、終わりを綺麗にしてくれる。それは、新しい始まりを作ることなんだって、私、今は分かる。だから——」


 シルフィは、拓海の手を握った。


 小さな、温かい手だった。


「——ここにいてね。私たちと一緒に」


 拓海は、シルフィの顔を見た。


 月明かりに照らされた、透き通るような顔。


「ああ」


 拓海は、頷いた。


「ここが、俺の居場所だ。もう、迷わない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ