表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解体屋、異世界を更地から救う ~俺の分別スキルが魔王の遺跡をリサイクルする~  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/22

第十七章 魔王の解体

水晶が砕けた瞬間、世界が震えた。


 地鳴りが城全体を揺らし、壁にひびが走り、天井から塵が降り注いだ。魔法の松明が明滅し、一瞬、全てが闇に包まれた。


 そして——地下から、何かが這い上がってくる気配がした。


「来る」


 クレアが剣を抜いた。


「全員、戦闘準備」


 騎士たちが隊列を組む。魔法使いたちが杖を構える。


 だが、敵は現れなかった。


 代わりに——声が響いた。


『——久しいな、人の子よ』


 それは、頭の中に直接響く声だった。低く、重く、どこか疲れたような響き。


『千年ぶりの、来客か。歓迎しよう』


「魔王……」


 エルドランが呟いた。


『そうだ、我が魔王ヴォルガス。かつて、この世界を闇に沈めようとした者。そして——勇者アルベルトに敗れ、眠りについた者だ』


「目覚めたのか」


『完全には、まだだ。封印は弱まったが、まだ我の体は動かせん。だが——意識だけは、戻った』


 声に、嘲りの色が混じった。


『お前たちは、我を殺しに来たのか? 無駄だ。勇者ですら、我を殺すことはできなかった。お前たちごときに、何ができる』


「殺しに来たんじゃない」


 拓海は、声に向かって言った。


「解体しに来た」


『……解体?』


「お前の体を、構成要素に分解する。骨、肉、魔素——全てをバラバラにして、処理する。それが、俺の仕事だ」


 長い沈黙があった。


 やがて、声が再び響いた。今度は、どこか興味深そうな調子で。


『面白いことを言う。解体、か。確かに、我を「倒す」ことは不可能だった。だが、「解体」とは——考えもしなかった』


「考える必要はない。俺がやる」


『ふむ……』


 声は、しばらく黙り込んだ。


『よかろう。やってみるがいい。我の体は、封印の間にある。辿り着けたなら、好きにすればいい。だが——』


 声に、凄みが宿った。


『——辿り着けるかな?』


 その瞬間、地下から何かが這い上がってきた。


 螺旋階段から、黒い霧が溢れ出す。霧の中で、何かが蠢いている。


「魔物か……」


 クレアが構えた。


 だが、それは普通の魔物ではなかった。


 霧の中から現れたのは、骸骨の兵士たちだった。鎧を着け、剣を持ち、空虚な眼窩がこちらを見つめている。


 アンデッド。死者の軍勢。


『我の眷属だ。千年の眠りの間、我と共に眠っていた者たち。お前たちの相手をさせよう』


「くそ……」


 クレアが剣を振るい、最も近い骸骨を斬り伏せた。だが、すぐに次の敵が迫ってくる。


 数が多い。螺旋階段から、次々と骸骨が這い上がってくる。十体、二十体、五十体——


「キリがない!」


「分かっている」


 拓海は、状況を素早く分析した。


 この骸骨たちを全て倒すのは不可能だ。数が多すぎる。だが——


「クレア、ここで食い止められるか」


「何をする気だ」


「俺は地下に行く。魔王の本体を叩く」


 クレアは、一瞬驚いた顔をした。だが、すぐに頷いた。


「分かった。行け」


「すまん」


「謝るな。これが、私の仕事だ」


 クレアは剣を構え、骸骨の群れに向かっていった。


「全員、聞け! ここで敵を食い止める! 桐生を、地下に送り出せ!」


 騎士たちが応え、骸骨との戦いに加わった。


 拓海は、その隙を突いて螺旋階段に駆け込んだ。


「シルフィ、ドルグ、リーネ、エルドラン——ついてこい」


「了解!」


 五人は、地下へ向かって駆け降りた。


 地下一階、二階——骸骨との散発的な戦闘をかいくぐりながら、チームは下へと進んだ。


 そして、地下三階——封印の間に辿り着いた。


 そこは、巨大なドーム状の空間だった。


 壁、床、天井——全てが魔法陣で覆われている。青白い光が脈動し、部屋全体が生きているかのように蠢いている。


 そして、部屋の中央に——それはあった。


 巨大な石棺。


 黒い石でできた、巨人用かと思うほど大きな棺。その蓋には、複雑な紋様が刻まれ、鎖のようなものが幾重にも巻きついている。


 封印の棺。


 魔王の遺体が眠る場所。


「これが……」


 リーネが息を呑んだ。


 拓海は、石棺に近づいた。


 「廃棄物鑑定」を発動する。


【廃棄物鑑定 発動】


対象:魔王ヴォルガスの遺体


構造:魔王種の肉体。通常の生物とは異なる構成

状態:仮死状態。肉体機能は停止しているが、魔素による保存で腐敗していない

危険度:SS(最高危険度。完全覚醒した場合、壊滅的被害の可能性)

資源価値:測定不能


構成要素:

・肉体組織:魔素で強化された筋肉、骨格、内臓

・魔核:胸部に存在。魔王の力の源泉

・精神体:肉体に結びつき、封印状態でも意識を保持


推奨処理手順:


封印を解除し、棺を開く

魔核を摘出し、無力化

肉体を構成要素に分解

各要素を適切に処理・浄化

注意:魔核の摘出に失敗した場合、魔王が完全覚醒する可能性あり


「魔核……」


 拓海は、分析結果を頭の中で整理した。


 魔王の力の源は、胸部にある魔核だ。それを取り出せば、魔王は無力化される。


 問題は、どうやって取り出すか。


「エルドラン、封印を解けるか」


「解ける。だが、解いた瞬間に魔王が動き出す可能性がある」


「どれくらいの時間がある」


「分からない。数秒かもしれないし、数分かもしれない。封印の強度と、魔王の状態による」


「賭けるしかないか」


 拓海は、石棺を見つめた。


 千年前、勇者ができなかったこと。


 それを、今、俺がやる。


「やる」


 拓海は決断した。


「エルドラン、封印を解け。解けたら、俺が棺を開けて、魔核を取り出す」


「待て。魔王の体に直接触れる気か。危険すぎる」


「他に方法がない」


「だが——」


「時間がない」


 拓海は、エルドランを見た。


「上では、クレアたちが戦っている。長くは持たない。今、ここで決着をつけなければ、全員が死ぬ」


 エルドランは、拓海の目を見つめた。


 そこには、恐れはなかった。ただ、静かな決意があるだけだった。


「……分かった」


 エルドランは、杖を構えた。


「封印を解く。準備はいいか」


「ああ」


 拓海は、バールを握りしめた。


 シルフィが、彼の隣に立った。


「私も手伝う」


「危険だ」


「分かってる。でも、たくみ一人には任せられない」


 ドルグも、工具を手に近づいてきた。


「わしもだ。棺を開けるなら、力がいるだろう」


 リーネは、一歩下がった位置に立った。


「私は、ここで見守ります。何かあれば、すぐに撤退の手配を」


「頼む」


 拓海は、仲間たちを見回した。


 一人で始めた仕事が、今、こうして多くの人に支えられている。


 感謝の言葉は、後で言おう。


 今は——


「始めよう」


 エルドランが、呪文を唱え始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ