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解体屋、異世界を更地から救う ~俺の分別スキルが魔王の遺跡をリサイクルする~  作者: もしものべりすと


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第十六章 核心へ

プロジェクト開始から一年半が経過した。


 五つの塔のうち、四つの解体が完了していた。残るは、中央の主塔のみ。


 主塔は、他の塔より一回り大きく、構造も複雑だった。地上五階、地下は——エルドランの推測では——少なくとも三階まである。


 そして、その最深部に、魔王の遺体が眠っている。


「いよいよだな」


 拓海は、主塔の入り口に立ち、その巨大な扉を見上げた。


 黒い金属でできた両開きの扉。表面には、見たことのない文字や紋様が刻まれている。


「この扉自体が、一つの封印だ」


 エルドランが言った。


「勇者アルベルトが施した封印の一部だろう。開けるには、特殊な手順が必要だ」


「手順?」


「この紋様を、特定の順番でなぞる。順番を間違えると、罠が発動する」


「順番は分かるのか」


「……おおよそは」


 エルドランの声に、わずかな躊躇いがあった。


 拓海は、彼を見た。


「何か、隠していることがあるな」


「……」


「言ってくれ。全員の命がかかっている」


 長い沈黙の後、エルドランは口を開いた。


「私は、千年前の戦いを知っている」


「知っている?」


「直接見たわけではない。だが——勇者アルベルトから、話を聞いた」


 拓海は眉をひそめた。


「勇者から? それは——」


「勇者は、討伐後すぐに姿を消したと言われている。だが、完全に消えたわけではない。一部の者には、接触していた。私も、その一人だ」


「何を聞いた」


 エルドランは、深い息を吐いた。


「魔王は、倒されていない」


 静寂が落ちた。


 周囲にいた者たちが、一斉にエルドランを見た。


「どういう意味だ」


「勇者アルベルトは、確かに魔王と戦い、打ち負かした。だが——殺すことはできなかった。魔王の肉体は、あまりにも強大で、完全に破壊することが不可能だったのだ」


「だから、封印した」


「そうだ。勇者は、自分の全ての力を使って、魔王を封印した。肉体を動かせないように、意識を眠らせるように。だが、それは一時的な措置に過ぎなかった」


「一時的?」


「封印は、永遠には持たない。少しずつ、弱まっていく。勇者は、いずれ誰かが魔王を完全に終わらせなければならないと知っていた。だから、封印の解き方と、魔王を滅ぼす方法を、信頼できる者に伝えた」


「それが、お前か」


「そうだ」


 エルドランは、拓海を真っ直ぐに見た。


「私は千年間、この時を待っていた。封印が弱まり、しかし魔王が完全に目覚める前に、誰かが現れるのを。魔王を——正しく『終わらせる』ことができる者が」


「……それが、俺だと?」


「そうだ。君の技術なら、可能かもしれない。魔王の肉体を、構成要素に分解し、完全に消滅させる。それが、唯一の方法だ」


 拓海は、主塔の扉を見つめた。


 千年前、勇者ができなかったこと。


 それを、俺がやる。


 重圧が、肩にのしかかるのを感じた。だが、同時に、奇妙な確信もあった。


 これは、俺の仕事だ。


 終わらせることが、俺の仕事だ。


「分かった」


 拓海は言った。


「扉を開けてくれ。中に入る」


 主塔の内部は、予想以上に広かった。


 入り口を抜けると、巨大な広間が広がっていた。天井は高く、柱が等間隔に並んでいる。壁には、燃え続ける魔法の松明が取り付けられ、青白い光を投げかけている。


 そして——広間の中央に、螺旋階段があった。


 上に伸びる階段と、下に降りる階段。


「上は、魔王の玉座の間に繋がっている」


 エルドランが説明した。


「下は、魔王の眠る部屋——封印の間だ」


「下に行く」


「待て。まず、上を片付けた方がいい」


「なぜ」


「玉座の間には、魔王の力を増幅する装置がある。それが稼働している限り、封印の間には強力な防御が張られている。装置を破壊すれば、防御が弱まる」


 拓海は頷いた。


「分かった。上から攻める」


 チームは螺旋階段を上った。


 二階、三階、四階——各階には、様々な罠と魔物が待ち受けていた。だが、一年半の経験が活きた。罠を見破り、魔物を排除し、着実に上へと進んでいく。


 五階——玉座の間に到着したのは、主塔に入ってから三日目のことだった。


 そこは、広大な空間だった。


 高い天井。壁一面を覆う魔法陣。そして、部屋の奥に——玉座があった。


 黒い石でできた巨大な椅子。その上には、誰も座っていない。だが、椅子の背後には、巨大な水晶のような物体が鎮座していた。


「あれが、増幅装置か」


「そうだ。あの水晶が、魔王の力を城全体に分配していた。今は封印の維持に使われている」


「壊せば、封印が弱まる」


「ああ。だが——」


 エルドランは、慎重な口調で言った。


「——壊した瞬間、魔王が目覚める可能性がある」


「……」


「覚悟はいいか」


 拓海は、水晶を見つめた。


 青白く輝くその表面に、自分の顔が映っている。


 覚悟。


 そんなものは、とっくに決まっている。


「やる」


 拓海は、バールを握りしめた。


 そして——水晶に向かって、振りかぶった。

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