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影を運ぶ者  作者: とろろ
3/5

第三話 崩れ落ちる音

耳をつんざく銃声が、乾いた町にこだました。

肩に走る衝撃とともに、父親の身体は無様に壁へ叩きつけられ、視界が大きく揺れる。

熱いものが胸の奥からあふれ出し、息を吸うたびに肺の奥で血が泡立つ音がした。


「……っ」


声にならない呻きが喉に張りつき、言葉はもはや外へ出てこなかった。

ただ、崩れ落ちる自分の身体を支えるものがなく、乾いた土の匂いが間近に迫っていた。


視界の端で、娘が叫んでいる。

だがその声も遠く、まるで厚いガラス越しに聞いているようだった。

彼女は、両手で頭を抱えながら倒れ込んだ夫の亡骸の横に膝をつき、泣き叫んでいる。


――なぜ、こんなことになった。


ほんの数時間前まで、久しぶりに会った娘と、これからゆっくり話せるはずだったのに。

胸の奥に渦巻く疑問は、次第に意識の霞に吸い込まれていく。


銃を構えていた黒いサングラスの男は、父親に止めを刺すことなく、倒れた身体を見下ろしていた。

その表情は読み取れない。

やがて男は一歩、また一歩と後ずさり、無言のままアタッシュケースを拾い上げると、振り返りもせずに去っていった。


――なぜ撃たなかった?


最後の弾が父親を貫いたにもかかわらず、彼の命を完全に奪おうとはしなかった。

それが残された僅かな猶予なのか、あるいは別の意味を持つのか。


視界が暗闇に閉ざされる寸前、父親の耳に娘の泣き声と、遠くから近づいてくる複数の足音が入り混じった。

誰かが駆けつけてくる。

それが救いになるのか、それともさらなる悪夢の始まりなのか――。


意識は、そこで途切れた。

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