第三話 崩れ落ちる音
耳をつんざく銃声が、乾いた町にこだました。
肩に走る衝撃とともに、父親の身体は無様に壁へ叩きつけられ、視界が大きく揺れる。
熱いものが胸の奥からあふれ出し、息を吸うたびに肺の奥で血が泡立つ音がした。
「……っ」
声にならない呻きが喉に張りつき、言葉はもはや外へ出てこなかった。
ただ、崩れ落ちる自分の身体を支えるものがなく、乾いた土の匂いが間近に迫っていた。
視界の端で、娘が叫んでいる。
だがその声も遠く、まるで厚いガラス越しに聞いているようだった。
彼女は、両手で頭を抱えながら倒れ込んだ夫の亡骸の横に膝をつき、泣き叫んでいる。
――なぜ、こんなことになった。
ほんの数時間前まで、久しぶりに会った娘と、これからゆっくり話せるはずだったのに。
胸の奥に渦巻く疑問は、次第に意識の霞に吸い込まれていく。
銃を構えていた黒いサングラスの男は、父親に止めを刺すことなく、倒れた身体を見下ろしていた。
その表情は読み取れない。
やがて男は一歩、また一歩と後ずさり、無言のままアタッシュケースを拾い上げると、振り返りもせずに去っていった。
――なぜ撃たなかった?
最後の弾が父親を貫いたにもかかわらず、彼の命を完全に奪おうとはしなかった。
それが残された僅かな猶予なのか、あるいは別の意味を持つのか。
視界が暗闇に閉ざされる寸前、父親の耳に娘の泣き声と、遠くから近づいてくる複数の足音が入り混じった。
誰かが駆けつけてくる。
それが救いになるのか、それともさらなる悪夢の始まりなのか――。
意識は、そこで途切れた。




