表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影を運ぶ者  作者: とろろ
2/5

第二話 影

町はずれの石畳の通りを、黒いサングラスの男が歩いていた。仕立てのいいスーツに身を包み、片手には重そうなアタッシュケース。夕暮れの光に長く伸びる影が、町並みに不気味な線を刻んでいた。


父は初め、ただの通りすがりと思った。だが、隣に立つ夫と思しき男の顔色が瞬時に蒼白に変わったのを見て、ただ事ではないと悟った。唇が震え、足元が崩れそうに揺れている。


「……知り合いか?」

父が問いかけても答えは返らない。恐怖に縛られ、男は声を失っていた。


サングラスの男は家の前で立ち止まり、無言でアタッシュケースを置くと、夫の腕を掴んで強引に引き倒した。抵抗は一瞬で潰され、石畳に鈍い音が響く。男の体はぐったりと力を失った。


そのままサングラスの男は父に視線を向け、低く命じた。


「――開けろ」


震える手で留め金を外すと、中には黒光りする長物が収まっていた。金属の冷たい輝きと、異様な重み。引き金に指をかければ即座に撃てるよう準備されたそれは、日常の風景には決してあり得ないものだった。


――従えば次は自分が撃たれる。


直感に突き動かされ、父はその得体の知れない銃を取り上げ、ほとんど反射的に引き金を引いた。轟音が狭い路地を震わせ、火花と硝煙が散る。


サングラスの男も即座に身を翻し、応戦してきた。乾いた衝撃音が互いの間に交錯し、石畳が削れ、壁に火花が弾ける。娘の悲鳴が遠くに聞こえた。


数度の撃ち合いの末、父の銃は不意に沈黙した。弾切れだった。


刹那、肩に焼けつくような衝撃が走る。視界が揺れ、膝が崩れる。娘の叫びと、無表情で銃を構え直すサングラスの男。その影が父に覆いかぶさっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ