#28 灰の微笑、継がれる紅
──処刑当日。城の広場は異様な静寂に包まれていた。
アリシア=フィオレット=グランヴェールは、王家に対する数々の罪を問われ、
その身をもって“破滅”の象徴たる《ルージュの杯》の恐ろしさを示すため、公開処刑されることとなった。
壇上に立つ神官が、罪状を読み上げていく。
「被告、アリシア=フィオレット=グランヴェール。貴殿は魔法学園にて──」
だが、アリシアはその言葉をまるで聞いていない。
ただ空を見上げ、口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。
(リリィさん……あなたの中の何かが、わたくしを“肯定”してくれた。
それだけで、十分ですのよ……)
やがて、王女セレナがゆっくりと壇上に上がる。
彼女の手には、あの紅のダガーが握られていた。
「この者の最期──我が手で下す」
その宣言に、群衆がどよめく。
セレナは、まっすぐアリシアの前に立つと、瞳を覗き込む。
「これが……あなたの終わりです。おとなしく、灰になりなさい」
「……ふふ、ええ。素敵な“贈り物”になるといいですわ」
その言葉とともに、セレナの手が動く。
ダガーが、アリシアの胸元へと突き刺された。
──刹那。
アリシアの身体が紅の光に包まれ、微笑みを浮かべたまま、崩れ落ちていく。
「……ああ、これが“壊れる”ということね……」
静かに灰となり、風に舞った。
◆ ◆ ◆
数日後──
王宮の一室にて、リリィは王女セレナと非公式の謁見を果たしていた。
「貴女のおかげで、我が国は救われました。感謝します、リリィ殿」
「……いいえ、わたしは……国のために、最善を選んだだけです」
深く一礼し、踵を返すリリィ。
だが、その背に──“冷たい感触”が走った。
(……え?)
胸元に熱い痛みが広がり、視界が暗転していく。
振り返ったその先に、見覚えのある紅い瞳が輝いていた。
「これでようやく、わたくしだけのものですわ」
「ア……リ、シア、さま……?」
そう呟いたリリィもまた、灰となって崩れ落ちる。
セレナは静かに微笑み、ダガーを握りしめる。
──その瞳は、完全に紅へと染まっていた。
◆ ◆ ◆
その夜。
王宮の奥深く、控室の扉がノックされる。
「王女陛下、ナナです」
「どうぞ、お入りなさい」
ダガーが、嬉しそうに震えた──。
──完。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!
『“わたくしのもの”になってくださる?
それとも、切り落としましょうか♡』は、
ふわふわお嬢様×猟奇×百合……という、
ちょっと(だいぶ?)尖ったコンセプトでお届けしてきた作品でした(笑)
最後までお付き合いくださった皆様のおかげで、
アリシアとリリィ、そして《ルージュの杯》の物語を“ここまで”描き切ることができました。
この物語は一応これで【完結】ですが、
もし読者様の中に「もっと壊れて欲しい♡」という方がいらっしゃれば……
もしかしたら、続きが始まるかもしれません……ふふ。
現在、感想・レビュー・お気に入り登録を全力でお待ちしております!
「ここが良かった!」
「○○のあの台詞ヤバい!」
「最後の展開ぶっ刺さった!」
……など、どんな一言でも励みになりますのでぜひ♡
ではでは、またどこかでお会いしましょう。




