#26 終焉の序章、鎖された微笑
──夜が明ける直前、学園は魔力と静寂に包まれていた。
王女セレナ率いる精鋭部隊が、ついに紅の聖堂へと突入する。
その先に待ち受けていたのは、紅の魔力を纏い、宙に浮かぶアリシア=フィオレット=グランヴェール。
彼女の手には、鮮紅のダガー──《ルージュの杯》。
「ようこそ。わたくしの庭へ──王女様♡」
その声とともに、紅い薔薇の茨が爆ぜ、兵たちを蹂躙する。
応戦する近衛団、王家魔術師団の呪詠が響くも、アリシアの魔力は止まらない。
◆ ◆ ◆
「このままでは全滅する!」
「下がれ、陣形を組み直せ──!」
戦場の混乱を、セレナはただ見つめていた。
そして、静かに左手を上げる。
「《カルマの鎖》──第一封印、展開」
黄金の術式が空間に刻まれ、聖堂の天井から光の鎖が降り注ぐ。
アリシアの足元が一瞬ふらついた。
「……これは、王家の封術?」
「あなたを止めるために、用意してきたものです」
「ふふ……嬉しいですわ。そのために、こんなにも手間をかけてくださったなんて」
アリシアは笑い、そして両手を広げる。
「でも──まだ、足りませんのよ」
その瞬間、ダガーが再び唸りを上げ、紅の魔力が聖堂全体を覆った。
◆ ◆ ◆
「今です、第二封印!」
セレナの声が響くと同時に、地面からも術式が浮かび上がる。
《カルマの鎖》──第二の拘束。
四方から伸びた鎖がアリシアの手足を拘束し、ダガーすらもその手から引き剥がす。
「っ……!!」
アリシアの身体が地面へと叩きつけられた。
紅い魔力が宙を舞い、やがて静かに霧散する。
──力尽きた。
セレナが歩み寄り、ゆっくりと《ルージュの杯》を拾い上げる。
「アリシア=フィオレット=グランヴェール。あなたを国家反逆罪で拘束します」
アリシアは顔を上げた。
その瞳に浮かぶのは、絶望ではなく──どこか“満ち足りた”笑みだった。
「リリィさん……これで、やっと……」
小さな声は誰にも届かず、ただ封術の光だけが、彼女の身体を包み込んでいた。
──処刑は、明日。




