#21 慈愛の微笑み、動き出す決意
白亜の王宮、その一室。光を受けて輝く純白のカーテンが揺れる中、第3王女・セレナは一通の報告書を読み終えていた。
「……これが、学園で起きている“異常”だというの?」
淡い金髪をふわりと揺らし、セレナは椅子から立ち上がった。
彼女は王国の第3王女であり、民に“慈愛の姫”と呼ばれる存在。
その微笑みは癒しであり、剣を握るときは凛然たる覚悟の象徴でもあった。
報告書の裏には、魔法学園に潜入した私兵たちの“途中経過”が綴られていた。
失踪した者。連絡が途絶えた者。目撃証言すら存在しない。
その中に、気になる一節があった。
──“紅の杯”。
──“愛という名を借りた執着”。
──“彼女は笑っている。紅に染まって。”
セレナはそっと窓辺に歩み寄る。
空には穏やかな陽光。けれどその眼差しは冷たい決意に満ちていた。
「……わたくしが嫁ぐのは三ヶ月後。けれど、それまでに片付けねばなりませんわね」
背後に控えていた老執事が静かに頭を下げる。
「ご出立の準備を整えましょうか?」
「ええ。近衛の中でも剣の冴えた者を。魔術の精鋭も集めて」
そしてセレナは、王家の封印庫から一つの小箱を手に取る。
──王家伝来の拘束呪具《カルマの鎖》。
それは絶対服従と静寂をもたらす“特別な具”。
彼女がこの手に取るのは、罪を裁くためだけ。
「止めましょう。その“愛”とやらが、誰かを喰らい続ける前に」
その微笑みは、いつもと変わらず穏やかだった。
けれど、そこには王族としての確かな意志が宿っていた。




