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18/28

#18 迫る違和感、紅き刻印

──彼が戻らない。


ライルが、夜の見回りに出たまま、寮に戻ってこなかった。

何度もナナは部屋の前で足音に耳を澄ませたが、扉が開くことはなかった。


(なにかが、起きてる……)


寮の規則を破ってまで、ナナは夜の資料室へと忍び込む。

目的は、学園内で起きた“失踪”に関する記録。ライルが消えた理由を掴むため──


埃をかぶった過去の記録簿をめくる。

報告されていない“失踪”が年に数件ずつ起きていることに気づいた時──


彼女の視線は、あるページで止まった。


『紅の杯に魅入られし者、再び現れん』


「……紅の杯?」


呟いた言葉が、室内の空気をわずかに揺らす。


その瞬間、背後に気配を感じた。

誰かがいる。


ゆっくりと振り向くと、そこには誰の姿もなかった──

だが、窓の外。月明かりの中に、一瞬だけ“何か”が揺れたような気がした。


◆ ◆ ◆


翌朝。


ナナはリリィの姿を見かけた。だが声はかけなかった。


(今はまだ……話すわけにはいかない)


ナナの視線は、学園の中央で無邪気に笑うアリシアを捉えていた。


紅茶を片手に、穏やかに談笑するその姿は、昨日の気配とまるで結びつかない。


──けれど、ナナにはもう確信があった。


(この人が、“紅の杯”とつながっている。ライルが消えたのも、絶対に……)


静かに拳を握りしめる。


(……見つけてみせる。証拠も、正体も──全部)


そして、ナナは再び、調査の記録を手に取った。

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