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第4話:機械の娘と父の願い

「喋った!?」シオンが飛び退き、ガレンが大剣を構える。ミリアがタバコをくわえたまま魔道狙撃銃を構え、「何だこイツ、敵か?撃つぞ」と睨む。エルナが慌てて制止し、「待って!敵意はないみたい…!」と叫ぶ。マキナと名乗った少女は、エメラルドグリーンの瞳で一行を見つめ、無表情のまま再び呟いた。「お腹…空いた…」

ガレンが大剣を下ろし、首をかしげる。「お腹が空いたって…機械人形がそんなこと言うか?何か食うもん渡してみるか?」シオンが背負いバッグを下ろし、「まあ、携帯食料なら持ってるけど…機械人形が食うのかよ?」と呟きながら、干し肉を取り出す。ミリアがタバコを咂えたまま、「ふーん、物は試しだろ。俺も乾パンならあるぞ」と自分のバッグから乾パンを取り出す。エルナも背負いバッグから干し肉を取り出し、「…『お腹が空いた』って言うなら、試してみましょう」と少女に差し出す。

一行が渡した干し肉や乾パンを、少女は無表情のまま手に持つ。そして、一口で詰め込み、頬を膨らませてモキュモキュと咀嚼し始めた。その姿はまるで小さな動物のようで、愛らしさを感じさせる。「…うわ、めっちゃ可愛いな…」シオンがぽつりと呟く。ガレンが豪快に笑い、「おいおい、機械人形のくせにこんな食い方するのかよ!面白い奴だな!」と手を叩く。ミリアがタバコを咂えたまま、「…まあ、敵じゃなさそうだな。食い物で満足するなら楽なもんだ」と呟く。少女は咀嚼を終え、「…エネルギー補給、微量。感謝…します」とぎこちなく頭を下げる。

エルナが目を輝かせ、「エネルギー補給って…やっぱり古代文明の技術で動いてるのね!この子、もっと詳しく調べたいわ…!」と興奮する。彼女は部屋を見回し、「ここ…ダンジョンの最深部みたいね。端末やモニターがたくさんある…この部屋を調べれば、古代文明の情報がもっとわかるはず!」と呟き、早速端末機に駆け寄る。ボサボサの灰色の長髪を振り乱し、寝不足の目に隈を浮かべながらも、古代文明への情熱が彼女を突き動かす。「このモニター…データが残ってるわ!古代文明の情報が開示できる…!」と夢中でボタンを押す。

すると、モニターに映像が映し出される。映ったのは、レオンの姿だった。白衣を着た男性が、疲れた顔で語り始める。「おはようカティ、覚えているか分からないが私は君のお父さんだ。俺は上層部の奴らに反対され廃案となったデウスマキナ計画、君を生かすためにひそかに研究を進めていた…。お前を延命するために機械の身体を作った。頭部パーツに脳を移植し、AIチップを埋め込んだんだ。脳移植は脳へのダメージが大きすぎる…だから、AIチップでそのダメージを補うしかなかった…」レオンの声は重く、深い後悔が滲んでいる。「古代文明は、巨大隕石の衝突を避けるために魔力砲を造った。俺たちはその制御のために、高度な演算能力が必要だった。カティ…お前のAIチップは、魔力砲の制御にも使われたんだ…」

レオンは目を伏せ、続ける。「魔力砲は確かに巨大隕石を破壊した…だが、砕けた破片が隕石群となって降り注ぎ、古代文明は滅亡した…」レオンの目は遠くを見つめ、過去の過ちを悔いるように言葉を紡ぐ。「この地下施設がまだ機能していれば、長い年月をかけて魔力を供給し、いずれお前が自力で覚醒するように設定した。そして、このビデオログを再生するようインプットしておいたんだ。カティ…俺はお前をこの形でしか救えなかった。申し訳ない…」レオンの声が震え、目には涙が浮かんでいる。「最愛の我が子…カティ。これから先は自由に、好きなように生きてほしい。俺たちにはできなかったことを…お前には叶えてほしい…」

映像はそこで途切れ、モニターは暗くなる。一行はしばし沈黙した。エルナが目を潤ませ、「カティ…って、この子のことね…。レオンは実の娘のカティを救うために、計画が廃案になった後も密かに研究を…こんな身体を…」と呟く。シオンが首をかしげ、「魔力砲って…前に話してたやつだろ?やっぱり壊れてたんだな。で、この子…本当にカティ本人なのか?」と疑問を投げかける。ガレンも頷き、「そうだな。機械人形だし…本人かどうか、確認したほうがいいだろ」と言う。

エルナが少女に近づき、優しく尋ねる。「ねえ、あなた…本当にカティなの?レオンの娘のカティ本人なの?」少女はエメラルドグリーンの瞳で一行を見つめた瞬間、鋭いエラー音が響いた。「ピーッ!ピーッ!…エラー…クリティカルエラー…データアクセス失敗…」彼女の身体が微かに震え始め、首が不自然にカクカクと動き、エメラルドグリーンの瞳が断続的に点滅する。声も途切れ途切れになり、「…デー…タ…破損…修復…不能…」と機械的な音声が漏れる。一行は思わず息を呑む。シオンが慌てて叫ぶ、「お、おい!大丈夫か!?なんかヤバいぞ、これ…!」ガレンも大剣を構え直し、「何だ!?壊れるのか!?」と警戒する。

数秒後、少女の動作がピタリと止まり、瞳の点滅が収まる。彼女は再び無機質な声で答えた。「…起動パラメータの不整合による異常始動のため、デウスマキナ00型のデータベースに該当する記録は見つかりません。私は…デウスマキナ00型。カティ…名前として認識。目的…再定義中。」その答えに一行は顔を見合わせる。エルナが青ざめた顔で呟く、「…クリティカルエラーって…。古代文明の技術とはいえ、こんな状態で起動してるなんて…相当深刻なダメージを受けてる可能性が…」シオンが呟く、「…カティじゃなくて、デウスマキナ00型って強調するあたり、なんかヤバそうだな…」ミリアがタバコを咂えたまま、「…まあ、本人かどうかは置いといて、敵じゃなさそうだろ。俺たちの目的は遺物だ。こいつが遺物ってことでいいんじゃねえか?」と提案する。ガレンが大剣を下ろし、ため息をつきながら言う。「…そうだな。またエラー起こしちゃうからここで改名してもいいのでは?デウスマキナ00型って長ぇし…マキナって呼べばいいんじゃねぇか?」と提案する。

少女は無機質な声で答えた。「…マキナ…呼称、承認。」その言葉にガレンがニヤリと笑い、「よし、決まりだな!これからお前はマキナだ!」と豪快に言う。シオンが首をかしげ、「…まあ、名前変えたらエラーも減るかもしれねぇな」と呟き、エルナが少し心配そうに呟く。「…本当に大丈夫かしら…でも、マキナって名前、悪くないわね。」一行の心に新たな仲間、マキナの存在が刻まれ始めた。ダンジョンの最深部で出会った少女と共に、彼らの冒険は新たな局面を迎えようとしていた。



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