第3話:機械少女との出会い
会議室で休息を取ったガレンたち一行は、古代文明語の認証システムが施された巨大な金属製の扉の前に戻っていた。エルナが古代文明研究書を取り出し、確認するが、「この研究書…今までの冒険者が色んな古代文明遺跡を探索してわかったことを書き記したものだから、IDカードの使い方までは書いてないわね。認証システムなのは確かだけど…」と呟く。「…サッパわからん」ガレンが両手を開いて首を振るジェスチャーをする。シオンが両手を後頭部にやりながら、「俺、古代文明語とかさっぱりだから、何か書いてあってもわかんねえよ。適当に試してみるしかねえんじゃね?」と提案する。
一行は扉の前で試行錯誤を始める。ミリアがタバコを咥えたまま、「ったく、面倒くせえな。ぶっ壊せねえのかよ」と毒づくが、ガレンが大剣で叩いてもびくともしない。エルナが研究書を頼りに古代文明語を解読しつつ、「このカードが鍵になるはず…どこかにかざす場所が…」と呟きながら、扉の横にある液晶パネルを見つける。「これかしら?」エルナがICカードをパネルにかざすと、青白い光が点滅し、今まで厳重に閉まっていた扉が重々しい音と共に開いた。「おお、開いたぞ!」ガレンが豪快に笑う。
扉が開くと、左右一本道の長い通路が広がっていた。通路の向かい側は一面ガラス張りで、左右の端には下に降りる階段がある。ガラス張りの壁からは下の光景が見えた。下には大量のメンテナンスポットが整然と並び、古代文明の技術の結晶が眠っているかのようだった。「これ…機械人形の保管庫だろ。すげえ数だな」とガレンが呟く。エルナが目を輝かせ、「古代文明の技術の結晶ね…早く近くで見たいわ」と興奮する。
一行は左側の階段を慎重に降りていく。階段の先は広大な保管庫で、左右に大量のメンテナンスポットが規則正しく並び、真ん中に通路が伸びていた。ポットには機械人形が安置されており、表面には古代文明語が刻まれ、微かに青白い光が点滅している。シオンが両手を後頭部にやりながら辺りを見回す。「ポットには機械人形が安置されてるけど、動かねえな。こんなポット、触っても大丈夫か?」赤い瞳で不安そうに辺りを見回す。ミリアがタバコの煙を吐き出し、「動かねえなら安全だろ。さっさと遺物見つけて帰ろうぜ」とせかす。
通路の先にカードをかざすタイプのパネルが設置された扉が見えた。エルナが先ほどのICカードをかざすと、パネルが反応し、扉が静かに開く。扉を抜けると、大きなホールの部屋が広がっていた。部屋の真ん中には一際大きなメンテナンスポットがあり、地面にはポットを中心に太いコードが放射状に繋がれている。部屋の周囲には色んな端末やモニターが並び、古代文明の技術の粋を感じさせた。ポットを覆うように白骨化した遺体が倒れており、首にはカードホルダーが下がっている。エルナがカードを確認し、「…レオンって書いてあるわ。この人、重要な研究者だったのかも」と呟く。「レオン…?何だそりゃ?」ガレンが首をかしげる。
ポットの中には、小麦色の長い髪とエメラルドグリーンの瞳を持つ少女が横たわっていた。幼さの残る可愛らしい顔立ちだが、表情は無く、瞳には生命の光がない。機械的な装甲に覆われた体は、人形のようだった。「これは…機械人形?見たことないくらい精巧ね…」エルナが古代文明研究書を手に、ポットの刻印を読み上げる。「デウスマキナ00型プロトタイプ…特別な個体みたい」と呟く。
エルナの目はさらに輝き、古代文明技術に興奮が抑えきれなくなる。「この端末…!古代文明の制御装置だわ!どうやって動くのかしら…ちょっと試してみないと…!」と、部屋の周囲に並ぶ端末機に駆け寄り、ボサボサの灰色の長髪を振り乱しながら操作を始める。シオンが慌てて言う。「おい、エルナ!適当にいじって大丈夫かよ!?」しかし、エルナは聞く耳を持たず、「これ、魔力回路の起動パターン…!すごい…!」と夢中でボタンを押してしまう。すると、ポットの魔力回路が反応し、青白い光が一斉に点滅を始める。「システム…起動。デウスマキナ00型プロトタイプ、稼働開始」無機質な声が響き、少女がゆっくりと上半身を起こす。冒険者たちを見据え、感情のない声で呟いた。「お腹…空いた…」
「喋った!?」シオンが飛び退き、ガレンが大剣を構える。ミリアがタバコをくわえたまま魔道狙撃銃を構え、「何だこいつ、敵か?撃つぞ」と睨む。エルナが慌てて制止し、「待って!敵意はないみたい…!」と叫ぶ。一行は突然の事態に動揺しながらも、この謎の少女とどう向き合うべきか考えを巡らせる。彼女の存在が、ダンジョン探索の運命を大きく変えることになる――。