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今日はここから  作者: いのくちりひと
第1章
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(02)

 僕が応援しているのはFC立花(たちばな)。僕の地元をホームタウンにしているJリーグのサッカーチームだ。

 Jリーグには上から下まで全部で3つのリーグがあって、各チームがどのリーグで戦うかというのは、前の年にいたリーグの中での順位によって変化する。降格制度という名の仕組みで、上のリーグで下位だったチームはその次の年は1つ下のランクのリーグに落ちる。下のリーグで上位だったチームが昇格して入れ替わるかたちだ。

 FC立花が今いるリーグはJ3。上から3番目で、日本のプロサッカーの中では最も下に位置するリーグ。プロだけど弱い。よくそう言われるけど否定はできない。

 僕らは2年前までは2番目のJ2にいた。でもその年の成績が最下位になって次の年はJ3へと降格。J1昇格を目指していたはずのチームの目標が、J2復帰に変わった。

 あのときは本当に悔しくて、特にシーズンが終わった後のオフの期間はとてもつらかったことを覚えている。大袈裟に聞こえるかもしれないけど本当の話。必死で悲しみに()えたものの、自分を責める気持ちや裏切られたような失望感はどうしてもぬぐえず、それが嫌でスタジアムからしばらく距離をおこうかと考えたほどだ。それでも次のシーズンが始まったときには躊躇(ためら)いながらもまたすぐワクワクして、結局のところ、飽きたり懲りたりすることが出来ずに今もまたここに通っている。確かに反省はない。

 Jリーグという言葉を聞くと、一般的にはトップリーグであるJ1を思い浮かべる人が多いかもしれない。J1には全国的に名の知れたチームが多いけど、それと比べたらFC立花は誰もが知っているというほど有名なチームじゃない。だけど僕のこの地元に限って言えば、FC立花の知名度は以前より上がってきているし、スタジアムに来る観客数やスポンサー企業の数は毎年少しずつだけど増えてきている。

 例えば僕が勤める会社もスポンサー企業のひとつで、職場のフロアにはチームのポスターが貼ってある。社長は僕がFC立花のサポーターだということを知っていて、試合の翌日などには「昨日は勝ったね」とか「また負けたね」などと声をかけてくれる。社長が自らスタジアムで観戦するのは年に数回程度のはずだけど、試合の結果を気にかけてくれることは僕にとってはとても嬉しい。

 試合の後によく立ち寄るコンビニでは、いつもの店員さんが試合の結果を聞いてくる。その話題にふれてほしくないときもあるけど、知り合いでもないコンビニの店員さんとFC立花を話題に会話ができるというのは、チームが地域に根差してきている表れなんだと思う。

 だけど僕の友人は言う。サッカーが好きなその友人は、J2やJ3よりも、J1のほうが試合を見ていて面白いと言う。なんなら海外サッカーを僕に薦める。

 確かにJ1や海外サッカーのほうが試合にスピード感があって面白く、ボール(さば)きの(うま)さも光る。彼が言うことは正論だ。彼はサッカーが好きで僕はFC立花が好き。そこに大きな違いがある。巧いとか下手(へた)とか強いとか弱いとかじゃなく、僕はFC立花が好きだから応援する。これが僕の正論だ。

 Jリーグのチームが自分たちの地域にあるのは当たり前のことじゃない、と、かつてFC立花に在籍して引退した選手がそう語ってくれたことがある。規模が大きな都市ならともかく、立花のような地方の田舎であればなおさらだ。その選手は縁もゆかりもなかったこの立花に来て、地域と僕たちサポーターを愛してくれた。その熱い想いを今につないで、僕は僕にできるかたちで選手とともに闘いたい。

 どのリーグにいるか、どのチームを応援するかは関係ない。恵まれたチームの一部のファンが他のチームのサポーターを馬鹿にするという話をときどき聞くけど、互いを認め合える本当のサポーターならきっと誰でも想いは同じ。

 サポーターとはそういうもの。分かってもらえるかな。


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