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強面さまの溺愛  作者: こんこん
一章
3/66

討伐です

グァァオオオオオォォァァォォォ


足でボーンベアを踏みつけ、口に付けた肉片をロゼの方に撒き散らしながら、ファイアードラゴンは雄叫びを響かせる。

その音量たるや凄まじく、耳を塞ぐ暇もなかったロゼは思わず呻いた。


「ファイアードラゴンだ!ファイアードラゴンが出たぞ!!」

「ボーンベアを食っていたのか…!しかし何故ここに」


ファイアードラゴンの強さは中程度。森の魔物は強ければ強いほど人里から離れるため、この魔物も普段は森の奥深くに生息している。


「普通ここまで来るものなのですか!?」

「いや、こんなに人里の方に出て来ることはそうそうないはず……!!何故よりによって新人隊しかいない時に!」


ロゼは思わず隣にいた火使いの同僚、ハンスに尋ねた。ハンスは焦りを顕にし、ふるふると震えている。顔は真っ青だ。


「焦るな!加勢の隊が早馬で森入口に到着したと今連絡が入った。隊が到着するまで持ちこたえろ!」


騒然とする空気の中、リデナスが場の空気を変えるかのように一喝する。その一声にはっとした隊員たちは、急いで戦いの構えを始める。しかし、やはり動きは硬く、まるで戦えそうにはない。


ファイアードラゴンは、名前の通り火属性の魔物だ。口から炎を吐く遠距離型の攻撃は、風使いの自分とはいい意味で相性が悪い。遠距離からの攻撃ならこちらが危険に晒される危険性も減る。恐怖と焦りで震える中、頭のどこか冷静なところでそう判断したロゼは、ファイアードラゴンが口を大きく開いた瞬間、両手をかざし風を起こした。


しかし震える手から出された風はなんとも頼りなく、小さい。

迫り来る炎に、両手をかざしたままぎゅっと目を瞑る。


「目を瞑るな!前を見ろ!!」


はっと目を開けると、視界一面には水の壁。そして、自分を背に庇うリデナスの姿があった。


「ただ突っ立っている木偶の坊に給金をやるほど師団の気前は良くない!お前ら、死ぬ気じゃない、生き抜くために戦え!!」


生き抜くため。その言葉に、隊員の動きが変わる。錆び付いた機械人形から、闘志を持つ戦士に。新人で死を近くに感じたことがないとはいえ、彼らは長い時間を掛けて厳しい訓練で自らを鍛え上げ、耐え抜いた者たちだ。本人次第でもあるが、切っ掛けがあれば全てが変わることもある。


「ロゼ!援護頼む」

「わ、分かりました!!」


先程まで真っ青だったハンスが今はしゃんと前を見て構え、ファイアードラゴンを睨みつけながら言う。

ハンスが炎の細槍を上空に複数、出現させる。その槍はロゼの体長程あり、緩やかな曲線を描く先端は眩しいほどに光り、熱い。

半円を描くようにして展開された槍の先端は、ひたとファイアードラゴンを見据えている。


炎槍(ファイアランス)!!」

風壁(ウィンドウォール)!」


ハンスが頭上高く手をあげると同時に、槍がファイアードラゴン目掛けて発射される。

ロゼはドラゴンが避けることのないよう、上昇気流をドラゴンの体に密着するように展開させ、外側から圧をかけるように押しとどめる。これはロゼなりに考えた、檻のように風圧を用いるやり方だ。


ファイアードラゴン目掛けて軌道を描いた槍はしかし、口を開けたドラゴンの炎によって跡形もなく燃え尽くされた。


「なっ」


渾身の一撃が呆気なく果てる様を見て、ハンスの顔に愕然と絶望が広がる。

このままではまずい。ロゼの"檻”も、そう長くは持たない。リデナスや他の隊員は新たに出現した魔物に手こずっているようで、加勢は期待できそうにない。


同じ事を思ったのだろう、焦った様子のハンスは、また同じことを繰り返そうとする。この炎槍(ファイアランス)は、ハンスが1番得意とするやり方だ。だから破られた時の衝撃は大きかった。が、しかし、同じことをしても繰り返しになるだけだ。

ロゼは咄嗟に、ハンスの槍の威力を強めようと槍に自身の風を纏わせる。

付け焼き刃の加勢は、しかし、結果として逆に作用してしまった。


ハンスが炎槍を発射した直後、それは先細り、そして消えてしまったのだ。

「っ!!ロゼ!」

「す、すみません!!」


なぜ、どうしてと考えている暇は無い。

しかしどうすれば……!

そう考えていた時だった。



「――――第二新人隊、発見!各小隊に場所を通達!」


戦場に慣れた、力強い声が響く。

と同時に、十数人の隊員がこちらに加勢に来る。


「た、助かった……」


思わずこぼしたようなハンスの独り言に、ロゼは心の中で同意した。




















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