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モールス信号

作者: みくた

 ある休日の夜、部屋でラジオを流しながら友人と酒を片手に雑談をしていた。

 ラジオからは某国が領海近くで軍事演習をやっているというニュースを流している。

「お、そろそろだな。ちょっとラジオ変えるよ。」

 そう言って友人がラジオの周波数を変える。

 するとスピーカーからかん高い電子音が断続的に流れ始めた。

 長い音と短い音の組み合わせからモールス信号であるということがすぐにわかった。

「モールス信号か?」

「そう。」

「なんて言ってる?」

 さらりと答える友人に聞く。

 友人は趣味で無線をやっており、モールス信号の送受信が出来る。

「さあ?」

 そう言って友人は肩をすくめた。

「さあって・・・」

 予想していなかった答えに俺は言葉を失った。

「解読してみたけど意味のない数字の羅列だった。多分、暗号化されてるんだわ。」

 一応、解読はしていたようだ。

「ふーん、誰が発信してるんだろうね?」

「どっかのスパイとかじゃね?」

「ホントに?」

 ありがちな冗談に俺は鼻で笑う。

「可能性が全くないわけじゃないよ。」

 友人が口元に笑みを浮かべる。

「ほう、根拠は?」

「今やってる某国の演習が始まってからこれが流れるようになった。・・・ていうかそもそもこの周波数でモールスは流れない。」

「なるほど・・・」

 急に信憑性のあることを言われ、少し興味が湧いた。

「それで前回が・・・」

 友人がポケットから年季の入った手帳を取り出しめくり始める。

「わざわざ記録取ってんのか?」

「まあね。この信号を偶然見かけたのがあの震災だから・・・ざっと十年。」

 開いたページを指でなぞりながら友人は短くない年数を言った。

「お、おう・・・」

 友人は元々マニアックなやつだが、予想以上の変人っぷりに若干引いた。

「まあ、パターンを見ると自衛隊に何らかの動きがあるときに交信してるっぽいね。」

「・・・これどっかに通報した?」

「五年前にした。職務怠慢さえしてなければどこかしらが監視してると思うよ。」

「まあ、なんつーかディープな話だね。」

 俺はいつの間にか交信が終わりノイズを流し続けるラジオを見下ろした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラジオから本来無い筈の放送があるというネタ(このネタの作品は食傷するほどにある)の中では、極めて現実性のある話で、冷静に考えれば国公認の実験となるけど、それはそれで怖い話です。 個人的には…
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