32.区長との面会
両親と共に学園から帰宅し、普段の平日ではほとんど出来ない一家団欒の夕食を済ませると、オルターから今後の予定を教えられた。学園長と話し合い決めた事らしい。
「今日話した通り、セシリィの結界で第二王女の妖精憑きの解除を試みる事がこれからの目的になる。ただしそれには、区長様から王様に話を通して貰う必要があるんだ。そんなわけで、一度セシリィも区長様に会っておいた方がいいから、今週末の天の日に面会の連絡を入れておいた。まあ、今回は挨拶をするくらいだから気楽に考えて貰って大丈夫だよ」
「はぁい」
正直なところ、区長と会っても子供の私が話す事などほとんどない気がする。
大人達にとってはそういう根回しが大切なのは理解しているが、私の目的はもう既にお姫様の救出になっているので、挨拶なんてすっ飛ばしてすぐに王都へ送って欲しいくらいだ。
まあ、そんな事は望んでも無理なので素直に従っておこう。それよりも今は、自分のやるべき事をやるだけである。
入浴を済ませて自室に戻ると、私はジージョにお願いして二冊の絵本を出して貰った。
一冊目は『おおぞらの オーケストラ』という絵本だ。様々な鳥達が集まり、音楽を奏でる物語である。これはエイミーへ贈る予定だ。
二冊目はパンケーキくまシリーズの二作目『パンケーキくまと はちみつこうじょう』だ。パンケーキくまが、ミツバチ達が運営する蜂蜜工場へ行くお話である。こちらはベラに贈りたい。
内容がこちらの世界の子供達にも通じるか、書き直す必要はないかを確認する為に、私は絵本を開いて読み始めた。
しかし、数ページ読み進めただけで瞼が重くなり、うとうとし始める。
仕方ないので私は絵本を閉じてベッドへ横になった。
今日は色々な事がありすぎて疲れていたのだろう。私はあっという間に深い眠りに落ちた。
翌日からも絵本の修正はなかなか進まなかった。
体力が落ちている状態での自宅と学園の往復は、それだけで疲労困憊で、息を切らしながら通う状態である。当然、帰宅して夕食と入浴を済ませたらもう眠くて仕方がない。
修正内容が決まれば後は妖精ちゃんに丸投げ出来るのだが、肝心の内容を決めるだけの体力が無いのである。
座って行うだけの作業すらままならない自分の状態に、少しばかり泣きたくなった。
そうこうしているうちに、あっという間に天の日が来てしまった。
私は机の上に放置してある絵本を未練がましく見ながら、区長邸へ行くための他所行きに着替える。普段は着る機会の無い上質な白いブラウスに青色のスカートを合わせ、リボンタイもスカートに近い色で揃えた。
最後に髪留めをパチンと着けて、姿見鏡で乱れが無いか確認する。うん、バッチリ決まっている。
玄関で待機していた両親も、しっかり身なりを整えられていた。特にオルターはいつもの簡単に纏めた髪ではなく、整髪剤まで付けてビシッと決まっていた。
思えば上流家庭へのお宅訪問なんて初めてなので、少しばかり緊張してきた。とりあえず失礼のないように、なるべく大人しくしておこう。
そう考えていたのに、区長邸を目にした瞬間全てが吹き飛んだ。
「こ、これが家なの!?」
道中で体力が尽きてオルターに背負われた私は、肩越しにその景観を見て圧倒された。
区長邸の敷地は周囲を高い石塀で囲まれ、正面の門扉には守衛が二人待機している。まずそれに驚かされた。
門扉の奥には石畳の敷かれた広大な庭が広がり、中央には大きな噴水が設置されている。これがお金持ちの家か、と思わず溜息が漏れるような光景だ。
更にその奥には、学舎と見紛うほどに大きな建物が構えていた。もはや言葉も出ない。
「はは、初めて見たら驚くだろうね。区長邸は社交の場にもなるし、他の地区の役人と情報交換や執務を行う為に公務館から出向する場所でもあるんだ。とにかく人が集まる場所だから、これだけ広いんだよ。ま、そんなわけで全部が住居というわけではないね」
なるほど、家がそのまま複合施設のような役目も果たしているらしい。それはそれで凄いのだけれど。
そんな感じで目に映る物に一々驚いていたら、守衛のおじさんに笑われてしまった。
オルターは私を下ろすと、守衛の一人に区長への取り次ぎを頼んだ。
「メリーバーク家の皆様ですね。ニーヴェルト様から来賓の予定は伺っております。すぐに案内人が参りますが、一旦待合室へ案内致します」
守衛のおじさんはそう言うと、門扉を開いて中へ招き入れてくれた。
ニーヴェルトという人物が、おそらく区長なのだろう。ちなみにメリーバークとは私の家の家名だ。
両親が先導に続いて私も門を抜けると、高い壁の反対側に建つ小さな家くらいの建物に目が留まった。外からは死角で見えなかったがこんな物があったのか。
私達は守衛に連れられるままにその建物に入り、一番近い部屋へ案内された。
あまり広くはないが、結構高そうな調度品が揃っている。ここが来賓用の待合室なのだろう。
「では、暫しお待ち下さい」
守衛のおじさんが出て行くと、オルターは私とドロシーをロングソファへ座らせ、自分はシングルソファに腰掛けた。
案内人が来るまでの間、他愛のない話をしていると、外がにわかに騒がしくなった。
いったい何事だろうと首を傾げていると、待合室のドアが開き二人の人物が入って来た。
その二人を見た瞬間、両親は立ち上がって礼をした。私も慌ててそれに続く。
「ニーヴェルト様、それにご夫人まで。お二人自ら待合室まで出向くなど、どうされたのですか?」
どうやら二人は区長夫婦らしい。言われてみれば男性の方はジークリフの面影があるように見えるし、女性の方の赤い髪はジークリフ兄弟と同じだ。
「そう畏まるな、オルター。今の其方達は国家の重要人物だ。むしろ私の方が王への仲介人に過ぎない立場なのだから、こうして自ら出向かねばならないのは当然だろう?」
「もっともらしい事を言っていますが、おおかた渦中の我が娘に興味があって、強引に案内人の仕事を横取りしたのでしょう」
「はっ、バレたか。だが建前の方も嘘ではないぞ」
オルターとニーヴェルトの軽口の応酬に、私は唖然とした。
区長相手でも遠慮の無いその様子は、随分と仲が良いように見える。二人はどういう関係なのだろうか。
男二人の応酬がヒートアップしてきたところで、静かに聞いていた妻達が夫の肩にポンと手を置き、止めなさいと言うように首を横に振った。それだけで口論はピタリと止まる。強い。
それから区長夫人は、スッと前に出て私を見た。
「私達が貴女に会いたかったのは本当ですのよ、セシリィさん。だって……、いえ、このような詰所で話す事ではありませんね。まずは客間へ案内致しましょう」
どうやらこの建物は、守衛用の詰所だったらしい。調度品が豪華に見えたが、本当に最低限の物だったのかもしれない。
夫人の提案に皆が頷いたので、私達は詰所を出て本館へと向かった。
本館の前では、執事と思しき初老の男が待機していた。
私達の到着を確認すると、彼は正面口の扉を開いて中へ案内してくれた。
本館の中は外観以上に圧倒されるもので、中に入った瞬間息を呑んだ。
高そうな絨毯の敷かれた、パーティ会場かと見紛うほどの広いロビーを見渡すと、何人もの使用人が働いている。
使用人達は、区長夫婦と来客の私達に気付くと、皆一斉に手を止めてこちらへ礼をした。まるでお姫様にでもなった気分で、顔が緩んでしまいそうだ。
ロビーを抜けると長い廊下に続いており、扉が幾つも並んでいた。
執事はその中の一つの扉を開き、中に招き入れてくれた。どうやらここが客間のようだ。
客間は詰所の待合室よりずっと広く、調度品も比較にならないほど高そうなもので揃えられている。
今度はソファではなく重厚感のあるテーブルに案内され、私は両親達が腰掛けたのを確認して自分も椅子に座った。
来客について事前に話を通していたのだろう。私の椅子は、座り易いように足置き板の付いた子供用の物だった。
皆が席に着くと、いつの間に準備したのか、執事がお茶の準備をテキパキと進めていく。
その姿は学園長の補佐をしていたシベルトよりも優雅で、しかし仕事は手早く、まるでそういう芸事を見ているようだ。思わず拍手を送りたくなる。
お茶の準備が整い執事が扉の前に控えると、ニーヴェルトはお茶を勧めるように手で促した。
皆がお茶を口にしたのを確認すると、ニーヴェルトは話を始めた。
「さて、妖精使いのお嬢さん。今日は来てくれてありがとう」
いきなりの聞き慣れない呼び名に、一瞬誰の事だか分からず聞き流しそうになった。ニーヴェルトが楽しそうに私を見てたので、自分が呼ばれたのだと気付く。
どう返事をしたら良いのだろうと困惑していると、隣の夫人が助け舟を出してくれた。
「貴方、セシリィさんが困っていますよ。ジークリフの真似をして、妙な呼び方をしないで下さい」
「ああ、すまない。こちらの方が馴染みがあるかと思ったのだが、そうでもなかったか」
どうやらジークリフは私についての話を親にしていたらしい。つまり先程の呼び名は、例の「妖精女」を丁寧な表現に言い換えたものだろうか。そんな気遣いはいらないよ!
文句を言いたいのを飲み込んで、とりあえず愛想笑いを返しておく。
「では改めて、セシリィ。まずは私達の子を二人とも救ってくれてありがとう」
「セシリィさん。貴女がいなければ、私達は息子を二人とも失っていたでしょう。本当に、本当に感謝しているのですよ」
最初の軽いノリから一転、区長夫婦から真面目な表情で謝意を伝えられて、背筋が伸びる。先日ジークリフからも礼を言われたが、私は区長一家の中で恩人扱いになっているようだ。
「兄弟二人とも無事だったみたいで、私も安心しました」
私は何と答えれば良いか分からず、とりあえず当たり障りの無い返事をしておいた。
もちろん、皆が無事で安心したのは間違い無く本心ではある。
「しかし、妖精を封じる結界というのは今まで聞いた事も無い。いったいどうして、そのようなものを扱えるのだ?」
ごもっとも。何故か今まで誰もその疑問を口にしなかったが、これが普通の反応だろう。
私がなんと答えようか悩んでいると、オルターが口を挟んできた。
「先輩。その質問の意図は何ですか? 場合によっては、僕達は協力関係を放棄してすぐに帰る事になりますが」
先輩という事は、オルターとニーヴェルトは同じ学園に通っていたという事だろうか。
ちょっと二人の関係を聞いてみたかったが、オルターの声が少しばかり怒りを含んでいた為、割り込む真似はしなかった。
普段温厚なオルターが怒るのは珍しい。先程の質問の何で怒ったのだろうか。
「そう怖い顔をするな、オルター。其方の言いたい事は分かるが、今のただの好奇心だ。普通は気になるだろう」
「理外の事象は妖精の干渉以外にありませんよ。その好奇心に意味はありません。善性の妖精というのが分かっていれば充分でしょう。妖精に……」
「分かった分かった、妖精に何故と問うなかれ、ありのままに受け入れよ、だろ? まったく君は、娘の事になると本当に煩いな」
ニーヴェルトが呆れたように苦笑すると、オルターはフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
私は両親に愛されているのを充分理解しているので気にしないが、どうやらオルターの親バカは第三者から見ると少し行き過ぎていると感じるレベルらしい。
そう考えると、不貞腐れているオルターの様子が何だか可笑しくて思わず吹き出してしまった。今日は借りてきた猫に徹するつもりだったのに失敗だ。
しかし、それを皮切りに皆も堰を切ったように笑い出したことで、場の緊張が緩んだようだ。結果オーライである。
それからは和やかな雰囲気で談笑に花を咲かせていたが、話が一段落したところで、ここからが本題だと示すようにニーヴェルトは姿勢を正した。
その様子に気付き、皆も背筋を伸ばして聞く姿勢に入る。
「さて、ここからは大事なことだが、王に会う前に結界の効果を私も直接確認したい」
「区長様、それは……」
「先輩っ、報告書は既にお渡ししたはずです! 娘に余計な負担を掛けないで下さい!」
ニーヴェルトの発言に、両親が揃って声を上げた。
私が結界を使った事で危篤状態に陥ったのだから、止めようとするのは当然だろう。
「以前に結界を使った事で、娘が長く伏せったことは知っている。しかし、王に話を通す以上、後で出来ませんでしたでは困るのだ。ただでさえ私は王から嫌疑を掛けられている身だからな」
王様に対して冗談で済まないのは理解出来る。しかし、王様に嫌疑が掛けられるのは普通じゃないだろう。何が原因で睨まれるような事態を招いたのだろうか。
私は「どういう事?」という目配せをオルターに送った。
オルターは私の視線には気付いたが、話して良いか悩んでいる様子で私とニーヴェルトを交互に見ていた。
それを察してニーヴェルトは事情を教えてくれた。
「オルターの娘はもう無関係ではないからな、教えておこう。最近、明らかに自然発生とは思えない妖精憑きの事例が各所で多発していてな。それがどういう訳か、私の関係者が多く被害に遭っている。それを騎士団に報告したら、何を考えているのか私が妖精憑きをもたらしている嫌疑を掛けられてしまったのだ。うちの息子まで被害に遭っているのに勘弁して欲しい」
ニーヴェルトは呻くようにそう言うと、大きな溜息を一つ吐いた。
「嫌疑を晴らす為、オルターにも無理を言って色々と奔走して貰ったが、目ぼしい手掛かりも見つけられなかった。今回の件でヴァルクリオから妖精の出処を聞き出せたので、ようやく調査が進んだが、王へ報告するにはまだ証拠が足りない。報告出来ぬうちは私の嫌疑も晴れないのだ。そんな時に、花の都の解決を持ち掛けて出来ませんとなればどうなるか、分かるだろう?」
私達子供が平穏に学園生活を送っている間、大人達は随分と苦労していたらしい。ニーヴェルトの立場を考えれば、失敗出来ないのも当然だろう。
「事情は分かります。しかし、結界に関しては私の報告した通りです。それを疑われては、今度の区政についても信頼関係を損なう事になるでしょう」
オルターとニーヴェルトは、お互い絶対に譲らない言うように睨み合いを始めてしまった。夫の主張を支持したい両者の妻も、困った表情で口を挟めずにいる。
ここは私が何とかしなければならないだろう。
(ジージョ、大人一人が入れるくらいの小さい結界なら、マナは枯渇しないかな?)
『うーん。イメージされた程度の大きさなら、姫様の持つマナの一割くらいで充分ですね』
どうやら結界を小さくすれば、思ったよりも負担を抑えられるようだ。
ならば話は簡単である。さっさと結界を見せて場を収めよう。
「お父さん。学園で出した結界は、大きすぎたからマナが枯渇しただけなの。一人分くらいの大きさなら負担は無いから、見せても大丈夫だよ?」
私の提案すると、皆の視線が一斉にこちらに集まった。
「そんな事が出来るのかい、セシリィ? 街の結界のように、決められた範囲を覆うような結界かと思っていたんだけど……」
「ふっ、オルター。報告にはそんな情報無かったぞ?」
ニーヴェルトは勝ち誇ったような顔をオルターに向けた後、スッと真面目な表情に戻り再度こちらに目を向けた。
「では、お願いしても良いだろうか?」
私はニーヴェルトへ頷くと、オルターの様子を伺った。
オルターは僅かに苦い顔をした後、仕方ないというように肩を竦めて私の頭を撫でてくれた。
「セシリィ、絶対に無理だけはしないでおくれ」
「大丈夫だって、任せて」
自信満々に胸を張って答えると、両親の緊張感も和らいだようで、表情が幾分か明るくなった。
私は椅子から降りると、テーブル脇のひらけた場所に移動して、ジージョに結界を出して貰った。
次の瞬間、目の前に薄黄色の膜が広がり、電話ボックス程の大きさの結界が完成した。
「ほほう、確かにこれは結界だな。私達が管理している結界とそっくりだ」
ニーヴェルトは興味深そうに結界を色々な角度から眺始めたが、それだけでは満足出来なかったようで、自ら結界の中に入り込んだ。
「旦那様、少しは警戒して下さい!」
執事のお爺さん、それに区長夫人も慌てた様子で制止するように手を伸ばした。
別に危険は無いのだが、確かに区長という立場の者が得体の知れない結界に自ら入るのは、無警戒過ぎるかもしれない。
だが、ニーヴェルトはただ楽しそうに結界を見上げているだけである。
これは本当にあの規律に煩いジークリフの父親なのだろうか。あの生真面目さは、区長夫人の教育の賜物なのかもしれない。
「心配するな、問題ない。しかし本当にこの中では妖精が使えぬようだな。オルターの報告書を信じていなかったわけではないが、こうして実際に妖精抑制の効果が確認出来た以上は、すぐに王へ謁見の連絡を入れよう」
満足した様子で結界から抜け出たニーヴェルトは、王様への連絡役を受諾してくれた。
今日訪れた目的は果たせたので、私と両親は揃ってホッと息を吐いた。
「はぁ、最初から報告書だけで納得してくれれば挨拶だけで済んだものを。それで先輩、王都にはいつ向かいますか? 僕達も長期滞在の準備をしなければなりません」
「それについては決めてある。三日後だ」
「……聞き間違いでなければ、流石に時間が無さすぎます。宿の予約も衣食の準備も間に合いません」
今しがた肩の荷が下りたばかりなのに、オルターはまた難しい表情に戻ってしまった。ドロシーも頭を抱えているから、本当に時間が足りないらしい。
すぐにお姫様に会わせて欲しいなどと考えていた私は、少し考え無しだったようだ。
「必要な手配は全て私が受け持つから心配するな。月が変わると秋の催事が多くなり、王との謁見が難しくなる。国にとって花の都の解決は急務だが、半年も前から決まっている予定を変更して頂くのは無理だ。故に謁見の予定を入れるなら、今が一番都合が良いのだ」
「なるほど。滞在の手配をお任せ出来るのであれば、私達は長期休暇の申請をするだけで済みます。王のご都合に関しては区長である先輩が一番詳しいので、三日後で承知しました」
結局、ニーヴェルトの立てた予定をそのまま採用する事で話は纏まり、私達は区長邸を後にした。
出発までの三日間で、私とドロシーは学園の、オルターは公務館の休暇申請を提出し、友人達にしばらく不在になる事を伝えた。
それから私は、寂しがっていた友人達のために必死で絵本の改変を進めた。生まれて初めて締切に追われるという体験をしたかもしれない。
頑張った甲斐あって、何とか出発前日には絵本が完成した。
絵本を贈ると、エイミーもベラも目を丸くして驚いていたが、すぐに絵本をぎゅっと胸に抱きしめて嬉しそうに喜んでくれた。その笑顔だけで頑張った甲斐があったというものである。
ついでにマルティアにも私の大好きな絵本を贈った。とても喜んでいたので、布教は成功と言えよう。
こうして慌ただしい日を過ごす間に、あっという間に王都への出発の日が訪れたのだった。




