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0.かみさまのせかい

 私はセシリィ、六歳の女の子だ。

 お勉強をしに、この春から学園へ入学する予定である。

 病弱でよく風邪をひき、非力で体力も無く、なかなかやりたい事が出来ないのがちょっとした悩みだ。

 そんな病弱で手の掛かる私を、両親は大事に育ててくれた。

 お父さんも、お母さんも大好きだ。


 将来の夢はお姫様になる事。

 お姫様といっても、守られるだけのか弱い姫ではない。魔物と戦えるような強い姫が目標だ。

 強いお姫様になれたら、王様の命令でお仕事がとっても忙しくなってしまったお父さんを助ける為、王様に文句を言ってやるのだ。

 お姫様になれば、文句を言っても王族批判というのにならないらしい。完璧な計画だ。

 名付けて『お姫様計画』である。


 お姫様になる為には身だしなみも大切なので、私はお洒落を勉強してみたり、お誕生日にお願いして指輪やネックレスを買って貰ったりした。

 毎日寝る前に、剣を持って戦うお姫様になった自分を想像して、イメージトレーニングもばっちりだ。




 今日は、お友達と一緒に街の外へ遊びに来た。

 目的は、お花畑で花の冠を作る事。

 お姫様計画の為、せっせと最高の冠を作った。

 お花を満遍なく散りばめて、最後に大きな黄色い花を側面に付けたら完成だ。

 自分でも惚れ惚れするほど完璧に出来た。


 私が冠を被ると、お友達の女の子二人は「本物のお姫様みたい」と褒めてくれた。私の欲しい言葉をくれる、なんて素敵な友人達だろう!

 本当にお姫様になった気分で喜んでいると、何処からか声が聞こえてきた。


『貴女は女王様から、姫の資格を与えられました』


 突然女王様からお姫様に選ばれたと伝えられ、私は驚いた。

 本当にお姫様になれたの?


『姫様を支える為に、私がこれから侍女としてお仕え致します。イデアを大切にお過ごし下さい』


 私にしか聞こえない声は、続けてそう伝えてくれた。

 侍女とは召使いさんのようなものだったはずだ。ますますお姫様らしくなった。

 私は驚き戸惑いながらも心の中でお礼を言うと、目の前にふわりと金色の光が現れた。

 それは私の中にスッと入り込み、次の瞬間、私の意識は深く沈んだ。




 意識が戻ると、不思議な空間にいた。

 暗い空間の中に、たくさんの世界がシャボン玉のよう散らばっているのが分かった。

 私は散らばる世界の中から、楽しい世界に行ってみたくて、不思議な空間を彷徨ってみた。


 程なくして、強烈に惹かれる世界が見つかった。

 その世界に近づくと、私はいつの間にか剣で戦うお姫様になっていて、妖精と冒険をしていた。

 冒険の目的は、願いを叶える宝石を見つける事のようだ。


 私と妖精は、世界中あちこちを旅した。

 いくつもの国を訪れ、船に乗ったり魔物と戦ったりした。

 この世界の私は、いつも思い描いていた勇敢で素敵なお姫様だ。

 とても心躍る冒険だった。

 

 旅路の果てに、私はついに願いを叶える宝石を手に入れた。

 私は願った。

 この世界の神様に会って、素敵な冒険をさせてくれたお礼を言いたい。

 そう願った瞬間、私の頭の中に新しい世界が広がった。




 そこは、何も無い白い空間だった。

 神様は一人寂しく、その空間で過ごしていた。

 ある時、神様は色の付いたペンを手に取って、新しい世界を作り始めた。

 何も無い白い空間で、神様はただひたすらに、いくつもの世界を作り続けた。


 新しい世界が完成するたびに、神様の幸せな気持ちが私にも流れ込んできた。

 けれど、ひとりぼっちの神様は、私から見るとひどく寂しく映った。


 しばらく眺めていると、不意に神様が苦悶の表情を浮かべて倒れた。

 同時に、私にも痛みと苦しみが伝わってきた。


 ……な、何これ!? 痛いっ!


 声を出す事も出来ない程の苦痛だ。

 このままでは危険だと、直感的に分かった。

 何とか苦しみから逃れようとしたが、どうする事も出来ない。


 私は抵抗する事も叶わず、そのまま意識が途絶えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最高に面白かったです! [一言] これからも追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!!!
2023/07/09 16:02 退会済み
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