奉仕種族 深きものども
深きものども(Deep Ones)は、代表的なクトゥルフ神話の架空の種族である。
トールキンの指輪物語のオークのような悪役クリーチャーとして知られる。
1982年にロバート・M・プライスが著したエッセイ『ダーレスによる”魚のような”と”両生類のような”の使用(Derleth's Use of the Words "Ichthic" and "Batrachian")』では、深きものの描写に関してプライスの持論が展開されている。
深きものは、ラヴクラフトに1931年に書かれた『インスマスの影(The Shadow Over Innsmouth)』で登場した。
ここでは、深きものは、
・委縮した耳
・まばたきしない大きな目
・平らに潰れた鼻
・大きな口
・無毛の頭
・暗色でゴムのような肌
・鰓の働きをする首の周りのたるんだ皮膚
・指の間の水掻き
・ガニ股でぴょこぴょこ跳ねる独特の歩行方法
・耳障りな発声
などの描写で表現された。
これらの身体的特徴は、インスマスの住人に多く見られるという意味から「インスマス面」と呼ばれている。
対するオーガスト・ダーレスの《永劫の探求》シリーズでは、描写を一切省いて半魚人やカエル人間として登場している。
恐らく深きものは、漫画やゲームなどの映像を伴う媒体では、ほとんどこちらの姿で登場していると思う。
この両者の食い違いは、前述した通りクトゥルフ神話は、作家の自由な裁量が認められており、どちらが正しいという訳ではない。
(プライスはダーレスが『インスマスの影』を読んでいないと信じたくなる読者もいるでしょう?と揶揄している)
深きものは、海の底で眠るクトゥルフに奉仕するため人間が適応した姿とされている。
あるいは、クトゥルフと共に地球にやって来た人外と交配することで、そちらに近似していった人類ともされる。
従って元は、人間であり、加齢と共に魚・両生類に似通った姿に変化していく。
最終的には、陸上よりも海中で暮すようになり、ほとんど不死身の生物になって何千年も生きるとされる。
彼らは、深きものの長老である父なるダゴン、母なるハイドラをクトゥルフと共に崇拝している。
ダゴンとハイドラは、巨大な深きもののとされているがハッキリしたことは、分かっていない。
海中でクトゥルフそのものを見間違えたとする意見や深きものは、年齢を重ねると巨大化するという意見がある。
ただ海底でクトゥルフが眠りに着いて3億年経つ。
海底には、クトゥルフに奉仕する大小様々、お互いの存在すら理解の及ばない怪物たちが彼の命令を待っているということがクトゥルフ神話の物語である。
クトゥルフの存在は、基本的に隠さなければならないとされている。
これは、クトゥルフの敵から彼を守るためだと信じられている。
しかし半面、同じクトゥルフを崇拝する集団でも全貌を知る者がいないというジレンマに陥っている。
深きものどもも自分たちが何を崇拝しているのかさえ、良く分かっていないのだ。
ラヴクラフトは、クトゥルフの復活は、時期が来れば自然と訪れるとした。
従ってクトゥルフには、どんな助けも必要ない。
クトゥルフにとって崇拝者たちは、何の意味もないし、何の関心もない。
これも宇宙的恐怖の構造を為している。
他にもハスター、ニャルラトホテプ、シュブ=ニグラスなどクトゥルフ神話には、様々な神々が登場する。
彼らにも独自の崇拝者がおり、これらを奉仕種族と呼ぶ。
眠りに着いているクトゥルフと違い、他の奉仕種族は、正しく彼らの信仰の対象の意を受けている。
しかしいずれにしても神々は、奉仕種族に対して好意的ではないという点で宇宙的恐怖の構造を取っている。