表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

外なる神アザトース




アザトース、あるいはアザトートは、蕃神(外なる神)の頂点に君臨する万物の創造主である。

その存在は、1922年に書かれたという『アザトース(Azathoth)』に現われている。


ただし、『アザトース』は、未完の断片である。

1926年~27年に書かれた『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream-Quest of Unknown Kadath)』で名前のみ登場した。




アザトースは、この宇宙、あらゆる次元、あらゆる存在を作り出した創造主である。

しかし当の本人には、知性も意思もなく沸騰するエネルギーの塊、創造の嵐の混沌カオスそのものである。

つまり世界は、アザトース自身が望んで創造した訳ではなく、彼の身体から飛んだ飛沫に過ぎない。


このため、全ての時空の外側に鎮座する外なる神々(The Outer GODS)は、なんとか自分たちの存在を消し去らないようにアザトースへ祈りを捧げている。

外なる神の使者であり、アザトースの代行者たるニャルラトホテプは、主人たちを嘲笑しつつも彼らの命令を実行している。


この世界観は、ダンセイニ卿の『ペガーナの神々(The Gods of Pegana)』の影響を指摘される。

ペガーナの神々の世界観では、マアナ=ユウド=スウシャイ(Mana-Yood-Sushai)が世界を創造した。

しかし世界は、マアナ=ユウド=スウシャイが次に目覚める時に作り直されてしまう。


そのため神々は、マアナ=ユウド=スウシャイが目覚めないように祈りを捧げているというものだ。




外なる神は、クトゥルフら旧支配者の上位存在とされている。

しかしラヴクラフトは、アザトースやニャルラトホテプらを指す語として作った訳ではない。


意味としては、「太陽系の外からやって来た神」であり地球古来の神(大地の神々)に対応する語である。

クトゥルフら旧支配者は、まだ宇宙生物という趣を残しているが外なる神は、時間や空間を自由に移動し、姿を見ることさえできない。


『ダニッチの怪(The Dunwich Horror)』では、

「偉大なるクトゥルフは、彼ら(Old ones=旧支配者)の従弟だが、彼らをぼんやりと探ることしかできない。」

Great Cthulhu is Their cousin, yet can he spy Them only dimly.

と解説されている。


なおこの文章でも分かる通り、ラヴクラフトは、旧支配者と外なる神とを使い分けていない。

少なくともクトゥルフは、旧支配者と見做していないような文章になっている。


旧支配者が無視されながらも外なる神に祈りを捧げているように、外なる神も無駄と知りながらアザトースに祈りを捧げている。

この関係も類似しており、宇宙的恐怖を表現する構造である。




ラヴクラフトは、幼少からギリシア神話に興味を持っていた。

ギリシア神話は、混沌カオスから世界コスモスが誕生したと考えている。

そして宇宙コスモスは、永久不変の物ではなく、やがて混沌に飲み込まれ、消滅すると考えた。


神々の王ゼウスは、時に英雄を送り出し、時に人間を罰することで秩序コスモスを維持しようと試みる。

しかし最終的には、世界から秩序が失われ、生ける物と死せる物、神と人間の区別も失われて元の混沌に循環する。


ラヴクラフトの友人ロバート・E・ハワードは、「文明こそ気紛れであり、最後に野蛮が勝利する」と《英雄コナン》シリーズで述べている。

あらゆる試みが打ち砕かれ、本質として無慈悲な混沌だけが宇宙に残る。

宇宙的恐怖は、地球の歴史においてマクロ単位で既に現われているのである。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ