涙一粒
作者の勝手な思い付きでペンを止めることなく書き綴った本人でさえも政界のわからない不完全燃焼ストーリー。
その頬を流れた、たった一つ部の涙のきれいさを僕は一生忘れることはないだろう。
高校三年の夏、セミが激しく生きている主張をしていたころ。僕は一人の少女に出会った。その少女は一人小川の辺に立ち日が沈んでいくのを眺めていた。
「どうしたの」そう声をかけようとした僕は思わず口をつぐんだ。夕日を眺める彼女の横顔があまりにもきれいだったから、声をかけることすらためらってしまった。
だけど次の日朝目覚めて僕はすごく後悔した。今日で夏休みが終わってしまうから。学校で見たことのないあの子は、きっとどこか別の場所にいる子だから。もう会えないに違いない。そう、寝ぼけた頭で考えていたんだ。
学校からの帰り道、僕は昨日と同じ夕日を眺めた。「昨日のほうがきれいだったな。」ふとそう思った。毎日変わらない日々、だったはずなのに。昨日あそこで少女を見た時から僕の人生の歯車は少しずつ違う方向を向いていった。
「あんた、お醤油買ってきて。」母さんにお使いを頼まれた。
外はもうすでに暗かった。スニーカーのひもを縛りなおして僕はランニングをしながらスーパーに向かった。いつもと同じ道をたどって。
「あれ?」僕は思わず立ち止まってしまった。スーパーまであと少し。というところで何か動く影がしたからだ。恐る恐る近づいてみると昨日のあの少女だった。しかし、昨日の美しい姿とは打って変わって暗い顔をしていた。その目は赤く充血していてまるで泣いた後のようだった。そう思っているうちに目が合ってしまった。「あっ。」ごめんっそういうよりも早く僕は彼女に手を引かれ、走り出した。「どこに行くの」そんなこと、聞けるはずもなかった。彼女の眼は、まっすぐ前を向いていたからだ。
彼女はふとその足を止めた。崖だった。「ここは?」僕は静かにそう尋ねた。彼女は何も答えてはくれなかった。どうして僕はここに連れてこられたのか。どうして僕だったのか。そんな考えが頭を巡ったが、そんなことどうでもよくなるくらい、そこから見る夜空はとても美しかった。と同時になぜかとても寂しさを感じた。「あ、醤油。」僕は母さんに頼まれたお使いを思い出し、そうつぶやいた。彼女は僕のほうをそっと振り返り、深くお辞儀をした。思わず僕もお辞儀をしてしまったが、顔を上げた時には彼女の姿はもうそこにはなかった。まさか飛び降りたのではないかっ。そう焦りと不安で胸がいっぱいになったが、海には水しぶきも上がってなければ並み一つ立っていなかった。なぜだか僕は深く考えることをやめ、また、スーパーに向かった。その日は何も考えることなく眠りにつき、いつもと同じ、寝苦しい夜を過ごした。
朝起きると僕はいつもと違う、違和感を覚えた。違和感の原因が何なのか、何が違うのかもわからなかったが、とにかく何かがいつもとは違っていた。しかし今日は寝苦しい夜だったとは思えないほど寝起きがすっきりしていた。登校中、ふといい香りがした気がして、僕はその香りに導かれるように路地裏に入っていった。「ねこ。」そこには真っ白い猫が一匹、何かを待っているかのように座っていた。「どうしたの、ひとりなの?」僕はそういうと猫を抱き締め同じように座り込んだ。
「学校!」その猫の毛の気持ちよさで、思わず眠りについてしまっていた僕は、遠くのほうから聞こえた学校のチャイムで目を覚ました。「あ、れ?」こともあろうか、冷たくなっていたのだ。その手に抱いていた真っ白で、きれいな、その猫を。「なんだよぉ。」僕は思わず泣いてしまった。猫の目から、一粒、涙が落ちたからだ。何だったんだよそう思う僕にはここ数日の出来事はすべて夢だったのではないかと思うのと同時に少女のにおいと猫へと導いてくれた香りが同じだったことに気が付いた。いつのまにか、セミの声は聞こえなくなっていた。
彼女の正体は?猫の存在を教えてくれただけ?それとも彼女が猫?
皆さんの高札を知りたいですね。
つたない文章で、すみませんでした。