6 先生は猫舌
にゃんにゃん
「はい、西島くんどうぞ」
「あ、どうもっす」
入部届にサインをしてから、先生がどこからか持ってきたカップと急須、それに緑茶のティーパックでお茶を入れてくれた先生なのだが…学校内で堂々といいのだろうか?
「あの、先生」
「うん?なぁに」
ふーふーと、可愛らしく息を吹きかけてお茶を冷ます先生。
「もしかして、猫舌なんですか?」
「うん、そうだよー。熱いの苦手なのー」
一生懸命にふーふーと冷ますので、可愛くてつい見入ってしまいそうになる。歳上なのにどこか年下のようで、そんな魅力がある人だから、自然と人気もあるのだろう。
「あの、今更ですがお仕事大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だよー。私はまだ受け持ちクラス少ないし、それに部活も指導も顧問の仕事だからね」
エッヘンと胸を張る先生。大変可愛らしいドヤ顔なんですが、ごめんなさい。男の子としてその大きな胸に視線がいってしまいます。別におっぱい星人じゃないんだけどなぁ…
「まあ、本当ならもっと仕事がありそうなんだけどねぇ。新米に仕事押し付けるっていう悪習がないのがここのいいところだね♪」
生徒にこんなにはっちゃけていいのだろうか?いや、深くは考えまい。
「あ、でも、先生はその…大丈夫なんですか?俺と2人きりが長いと変な噂されるかもしれませんし、彼氏さんとかが心配するじゃ?」
「うん?私彼氏はいないよー。それに、西島くんみたいな可愛い子なら全然OKだよー♪」
え?これは社交辞令なのか、それとも…って、いやいや、生徒と教師だし、からかわれてるだけなのかもだ。冷静になれ俺。先生が俺を好く要素なんてあるだろうか?
見た目…普通
中身…普通
お金周り…遺産のみ
社交性…皆無
うん、別に優良物件でもなんでもないよね。むしろ面倒なファクターしかない。先生だって、ある程度俺の家庭環境は知ってそうだし、知ってたらもっと、別の反応しそうだしね。
結論、素晴らしき勘違いだ。
「あ、そういえば西島くんは明日のお昼はどうするのかな?」
「えっと、多分購買で買うと思います」
「うん。じゃあ、明日からここでお昼ね。お弁当作ってきてあげるよ」
……What?
「え、あの…俺は嬉しいけどいいんですか?負担になりそうな気が…」
「2人分なんて大した手間じゃないよー。それに、西島くんにお礼したいから、気にしない気にしない♪」
そんな風に笑う先生。というか、これは本当に勘違いしそうになってしまうが…これは、あれだよね。頑張った子供にご褒美的なそれ。うん。そうに違いない。
この頃から勘違いの勘違いが始まっていたのだが…この時の俺は気づかないのだった。