5 写真部へようこそ
私物化とか野暮なことはNGでw
「お待たせ、西島くん」
その日の授業が終わり、指定された場所で待っていると鍵を持って先生が来た。この時間…というか、この場所自体人気が少ないので、分かりやすいのだが、先生と2人きりというのはやっぱり緊張するものだ。
そんなことを考えてるとはつゆ知らず先生は暗室の鍵を開けてから電気をつけて言った。
「さあさ、入って」
「あ、はい。お邪魔しまーす…」
階段下の場所に辺るので、ちょっとだけ地下って感じなのかな?思ったよりも広い室内に驚いてから…俺は別の意味で驚いて言った。
「……あの、ひょっとして、先生ってここが母校だったりします?」
「え、うん。そうだよ。よく分かったね」
「それで、実は写真部だったとか?」
「うんうん、せいかーい♪」
やっぱりか……。どうしてそんなことがわかったのか。それは実に簡単なことだ。妙に生活感溢れる室内にはもちろん専用の機材もあるのだが、他にもUNOやらボードゲーム類や寝袋にストーブ、それから電気ポットにカップ。あと壁に先生の制服姿と思われる人と数名の女子が仲良く写っており、そこに名前とベストフレンド的な感じで書いてあったからだ。
「あの、真面目に活動ってしてたんですか?」
「うーん、実は専門的なことは何もしてなかったの。皆で楽しくがモットーだったからねぇ」
「なるほど…」
思ったよりも緩そうで少しホッとする。まあ、専門的なものも興味はあるけど、写真部という名のゆるふわ部なら気楽にやれそうだ。1人だけど。
「そのね、西島くんが嫌じゃなかったら、放課後ここで先生と部活しないかなぁと思ってたんだけど…どうかな?」
ちらっと、伺うようにそう聞いてくる先生。まあ、別に構わないんだけど…先生はなんで俺なんかを誘ったのだろうか?これが特別な感情なら嬉しいけど、そんな思春期の妄想はさておき、先生も懐かしい場所で一息つきたいのだろうと判断して俺は頷いて言った。
「わかりました。先生が良かったらお願いします」
「本当に!?」
「はい。よろしくお願いします」
「良かったぁ」
嬉しそうにホッとする先生。いちいち仕草が可愛いから本気で勘違いしそうになる。でも、俺にはこの部活自体に損はないし、むしろ美人な可愛い先生とそこそこ距離が近くなるし悪いことはないな。
ただ、他の男子だったら間違いなく勘違いしそうになるほどに天然だから、そこは気をつけようと思いながら、俺はこの日写真部に入部したのだった。これが、先生からのこっそりとしたアピールだとは思わずに。