3 呼び出しと役得
迷走中…
俺が通っているのは、所謂農業高校というやつなのだが…そう聞くと皆は何を連想するかな?銀○匙、のう○ん、アニオタならそこら辺かな?
でもね、実際の農業高校って、よっぽどのところじゃないとそこまで派手なわけじゃなく、普通科の授業にプラスで農業系の実習が入る程度なんだよね。
んで、俺の通っている学校では1年生の時は皆同じカリキュラムで、農業の授業は統一されてるんだけど、2年生からは選択授業と言って、それぞれ希望するコースでの授業を受けることになるんだ。
3年生になったら、普通科の教科より実習が多いと先輩から聞いているが…まあ、そうやって農業を学んでも大抵の学生はその分野とは無関係の仕事や専門学校に行くことが多いのだ。
と、まあつまり、普通と違うことをしていても、俺たちは普通の高校生なわけで…
「あ、西島くん。ちょっといいですか」
……こんな風に呼び出しをされると、かなりびっくりするのだ。しかも、お相手はまさかの相沢先生。男子からの嫉妬を受けつつ、頷いて大人しく着いていくと、何故か進路指導室に通されることになる。
え、俺なんかしたっけ?覚えがないので冷や汗をかきそうになっていると、相沢先生は可愛らしい笑みを浮かべて言った。
「改めて、今朝はありがとうね」
「今朝…ああ、いえ、あれはほとんどイケメンさんのお陰なので…」
「違うよ。君があそこで声をかけてくれたから助かったの。だから…ありがとうね」
そう言われるとなんというか嬉しいけど…でも、わざわざ呼び出してまでお礼を言うなんて凄く真面目だなぁと思いながら頷いた。
「ところで、お昼はもう食べたかな?」
「あ、えっと、実はまだです。これから購買に買いに行こうかと思ってたんですが…」
「そう…今からだとちょっと厳しいかな」
「ですね」
体育会系の連中が買い占めることが多いので、少し出遅れるとすぐ無理になるのだ。まあ、俺は1食くらいなら抜いてもさほど問題ないけど…そんなことを思っていると先生は言った。
「あのね、嫌じゃなかったら、私のお弁当分けようか?」
「え、でも、悪いですよ」
「気にしなくて大丈夫だよ。私少食だしね。それに、ちょっと色々西島くんと話したいこともあるからね」
断れる雰囲気じゃないし…まあ、たまにはこんな役得があってもいいのかなっと思いながら俺は言った。
「わかりました。では、すみませんがお願いします」
「うん。じゃあ、ちょっと待っててね」
そう言ってから教室を出ていく先生。にしても、相沢先生って優しいんだなぁ、わざわざお礼まで言ってお弁当分けてくれるなんて。この時はそんな風に考えていたのだ。