21 引っ越しの手伝い
お手伝い
「あの……帰っていいですか?」
先生の家に着いて早々に俺はそう言った。何故かと聞かれれば……
「なんで残りの作業が衣服類のみなんですか?」
「だって、ヒロくんに任せたかったんだもーん」
「いや、普通はチカラ仕事でしょう?」
「だって、そんなに重いものないんだもん」
確かに備えつけの家具が多めだけど……だからって最後に衣服を残すか普通。しかも下着とか出しっぱなしだし。
「はぁ……とりあえず早く終わらせてお昼にしましょうか」
「さんせー。あ、お昼は何か奢るよ。何がいい?」
「いえ、俺が払いますよ。昨日は夕飯作ってもらいましたしね」
「ぶー、ヒロくん。大人にもプライドはあるんだよ?そこはどんとヒモになった気分でよろしくでいいんだよ」
「いや、俺普通に働くつもり満々ですから」
なんでこの人は俺がダメ男になる前提で話してるんだ?いや、確かにこのまま先生に侵食されればダメ男街道まっしぐらな気もするけどさ。それでも、ダメ男になるつもりはない。普通に働いて稼ぐつもりだ。
そうして作業に取りかかるが……なんか黒とかの下着見ると異様にドキドキする。個人的には水色が好きなんだけど……黒で透けてるのとか本当に先生履くのかな?いや、余計な想像はよそう。
「ふむふむ……ヒロくんは黒か水色と……」
「心を読まないでください」
「だって、さっきから黒とか水色に視線がいってるだもん。あ、ちなみに今日は赤だよ♪」
「……そうですか」
「赤も守備範囲と……」
「メモらないでください」
そんなのメモってどうするつもりなのやら……いや、分かってるけどさ。なんか下着まで俺の趣味にしたらいよいよもってなんか俺が先生を染めたみたいになりそうで怖い。
「ねえ、ヒロくん。今度下着買う時は付き合ってね」
「いや、なんでですか」
「ヒロくん好みの女になりたいからかな♪」
「……もう、十分俺好みですよ」
そう言うと先生は少し驚いてから嬉しそうに俺に抱きついてきた。
「ヒロくん大好き♪」
「ちょっ……作業してくださいよ。脱線してる暇ないですよ?」
「いやー」
「嫌じゃないですってば」
なんか無防備に抱きついてきてくる先生に男として時々我慢できなくなりそうになる。本当に天然というかなんというか……俺が襲わないとわかってるからかな?それともわざと誘ってるとか……いやいや、それは飛躍しすぎか。でも、わざと俺から襲うよう仕向けてたら……うん、効果は絶大だと言わざるおえないよね。
そんな風にして引っ越しの手伝いをするのだった。