18 朝から一波乱
グッドモーニング
「どっちだろうなぁ……」
起きて早々に俺はまずそんなことを呟く。昨日の夜、結局先生は部屋には帰らずに一緒に寝ることになってしまったのだが……朝早くに目を覚ますと何故か俺を抱き枕代わりにして寝ている先生。
これが故意であるか天然なのか色々悩みつつも、どうにか抜け出せないかと腕を動かしてその手が太ももに触れて先生が色っぽい声を出したのだが……うん、絶対起きてるよね。
「梨紗さん。起きてますよね?」
「すぴー」
「いや、今時そんな古風な寝息ないですって多分」
「ううん……ヒロくんがキスしてくれたらおきるー」
「人のファーストキスを寝起きに使い切らないでください」
「じゃあ、これから毎日キスで起こしてー」
多分半分は起きてるけどもう半分は寝ぼてけてそうだ。というか、朝から理性を削りにくるのやめて欲しいが……まあ、そうも言ってられないのだろう。
「はぁ……とりあえず俺起きたいんですけど」
「だめー」
ギュッと抱きしめてくる先生。嬉しい状況のはずなのに不思議と落ち着いてる自分がいるのは、多分長年の経験からだろう。まあ、そんな経験はないが……とりあえず俺に休憩をおくれ。
「ヒロくんは抱き心地最高だねぇ」
「そうですか?」
「うん。あったかーい」
そう言いながら匂いを嗅ぐのはやめて欲しいが……なんかこの人に抱きしめられてると安心してしまう。本当に不思議な人だ。とはいえ毎日これでは俺が持ちそうにないなぁ……
「とりあえず離して貰えますか?」
「ヒロくんが私を満足させられたらいいよー」
そう言われてもなぁ……流石にいきなりキスはハードル高い。まあ、俺のファーストキスくらいあげても別にいいんだけど……なんだか、1度許すと際限なく求められそうで怖いのだ。
仕方ない……
「えい」
ぷにっとなんとか伸ばした指で先生の頬をつつく。柔らかい感触を堪能しながらしばらくつつくと先生は微笑んで言った。
「ヒロくん意外とSなんだねー。こういうの大好き♪」
どうやらお気に召したようだけど……自分でも何故頬をつついたのか疑問ではある。なんとなく柔い刺激で満足しそうな気がしたのだが……深く考えたら負けだな。うん。
というか、これからこれが毎朝続くのだろうか……前は朝起きるのにこんなイベントはなかったし、嬉しいっちゃ、嬉しいけどさ……でも、なんかそのうち過激になりそうで怖いなぁとも思う。
なんだか自分が思っている以上に大人の階段登るの早そうだけど……もうしばらくは清い関係がいいよなー、とも思うのだった。