11 先生の車
車です♪
「お、お待たせしました……」
バイトが終わってから本を読んでいた先生にそう言うと先生は微笑んで言った。
「全然。じゃあ、行こうか」
「えっと、どうやってですか?」
「私の車。西島くんは歩きなんだよね?」
「ええ、喫茶店までなら歩いて行こうと決めてるので……」
お祖母ちゃんがいた頃からここまでは絶対歩きと何故か決まっていたのだ。まあ、そう距離もないし、俺は別に問題なかったのだが……お祖母ちゃんは途中から通えなくなったんだよなぁ。
そう思いながら駐車場まで歩くと、可愛らしい青色の軽自動車が停まっていたので、それが先生だとすぐにわかった。というか、駐車場にこれしかないしね。
「じゃあ、助手席乗ってね」
「わかりました」
久しぶりに車に乗るなぁと思いながら乗る。いつ以来だろうか……多分お祖母ちゃんの葬式以来だな。うん。俺も3年生になって進路決まったら免許取る準備しないとな。田舎だし、やっぱり車ないと不便だしね。
「西島くんは免許は取るのかな?」
「えっと、そのつもりです。先生はAT限定ですか?」
「一応、免許はMTだけど、普段はATの……こっちがいいからねぇ。マニュアルだとクラッチの操作が増えてやりずらいし」
「やっぱり難しいんですか?」
お祖母ちゃんは男なら絶対MTで取れと言っていたが……そのお祖母ちゃんは早めに免許の返納をしたらしく、車に乗ってる姿は1度も見たことない。いつ死んでもおかしくない老人が若者を撥ねるかもしれないのに乗れるわけないと言ってたっけ。
「まあ、慣れればそこまでじゃないよー。でも、マニュアルの車って注文してから時間かかるし、デメリットも多いからオートマが安心かな?」
「そうなんですか」
バタンとドアを閉めてから、ふと、随分と近い距離で2人きりなるんだなぁと今更ながら思った。
車に乗ってからエンジンをかけるために、そういえば、鍵をささないなぁと思っていると何やらボタンを押した途端にエンジンがかかって驚く。
あ、これって新しいタイプの車?なんか鍵をさして回さなくても持ってればボタンとブレーキを押すだけでかかるってやつ。
「随分と物珍しそうだね」
「えっと、実は車はあんまり乗ったことなくて」
「あら、田舎の人のセリフじゃないね」
「まあ、否定はしません」
そもそも免許を持ってる家族がいないからなぁ……消えた父さんなら持ってたらしいけど、今更会える気がしないしね。まあ、それに仮に会ったとしても多分話すことはないかなとも思うしね。