10 バイト先での遭遇
遭遇は基本
「……あの、先生」
「ん?なあに?」
「なんで俺のバイト先知ってるんですか?」
とある小さな喫茶店。お祖母ちゃんが好んでいたこの店の店長とは仲良しなのでこうしてよくバイトをしているのだが……先生に詳しく話してないはずなんだよなぁと思っていると先生は可愛らしく笑って言った。
「生徒のバイト先くらい調べられるのが教師なのです」
「完全に職権乱用じゃないですか」
「私は西島くんのクラスの副担任だよ?生徒のケアも仕事のうちなのです。それより注文いいかな?」
そう言われては仕方ないので注文を聞く。
「オムライスに文字書くサービスあるのかな?」
「メイド喫茶じゃないです」
わざとだろうか?天然もありそうで怖いが。
「ありゃ。じゃあ、オススメは?」
「そうですね……ケーキセットとか?」
「じゃあ、それで」
「わかりました。じゃあ、少々お待ちください」
先生から注文を受けてから店長に伝えようとすると、店長は何やらニヤニヤしていた。
「な、なんですか?」
「いや、随分とフレンドリーな先生だなぁと思ってねぇ」
「……気のせいですよ。多分」
「そうかな?僕には弘樹くんに脈アリに見えるけどねぇ」
「それより、オーダーですよ。ケーキセット」
「はいはい」
そう言ってから準備に入る店長。すると、何やら先生に呼ばれたので行くと先生は嬉しそうに言った。
「このお店いいね。これから通おうかなぁ」
「いいですけど……別に普通の喫茶店ですよ?」
「西島くんがいるから来たいんだよ」
そうストレートに言われると照れるが……いやいや、勘違いしちゃダメだって。それで痛い人にはなりたくないし、でもなぁ……
「ねぇ、西島くんは何時までバイト?」
「え?えっと、今日は昼までですが……」
「その後予定ある?」
「いえ、本当は他のバイトあったんですが、シフトの都合で今日は休みになっちゃったんです」
「つまり暇なんだね?」
なんだなんだ?そう思いながら頷くと先生は微笑んで言った。
「じゃあ、バイト終わったら私の家に行かない?」
「……はい?」
いやいや、なんでそんなことになるのだろうか……ひょっとしてドッキリか?あるいは詐欺かと疑うが……生徒にそんなことする人じゃないと思って落ち着こうとする。
「えっと……いいですけど……」
「やったぁ♪じゃあ、終わったら教えてね」
そう言いながら本を取り出したのを見て終わるまでそうして暇つぶしするのだろうと悟った。本当にこれってどう受け取ればいいのやら……まさか本当に勘違いじゃないとか?
だとしたら……俺はどうすればいいのだろう。