その後②
摩天楼の遥か上空を、二つの人影が浮遊していた。人影は光の海の上をふわりふわりと移動していたが、とある高層ビルの屋上に舞い降りると、コンクリートの淵に腰を掛け、そこから見える景色に目を遣った。
「凄い……。宝石箱をひっくり返したみたいだわ。」
オールジーは目を見張って呟いた。
「なあ……。お、あれが自由の女神だな!」
「本当だ!ね、ラウル。あれってエンパイア・ステート・ビルよね?」
「そうだ、そうだ!」
二人は暫くの間、そこから見える建造物を探して燥いでいた。
「凄いな……。」
「綺麗ね……。」
「何度見ても、ここからの眺めは最高だな。…………ね、オールジー。」
「なあに?」
「それで……君の用事は、全て済んだのかい?」
オールジーは煌めく街から視線を外し、ラウルを見た。
「ええ。そう思うわ。」
「そうか、それは良かった。」
「あなたにも色々心配かけたわね。」
「ううん。……日本から帰って来た君は、何だかとてもいい感じに見える。良かったと思うよ。」
「自分でもそう思うわ。ありがとう。」
「これから…………どうしようか。」
そうねえ、とオールジーは考え込んだ。
「私……またアフリカに戻ってもいいわ。あなたは?」
「実は僕もそう考えてた。じゃあ、そうしようか。」
「あなたのご両親には、少し寂しい思いをさせちゃうことになるけど。」
「分かってくれると思うよ。二人とも医者だもん。」
「そうね。」
「もう一生分の休暇は取った。そろそろ働かないと腕が鈍る。」
「ふふ、じっとしていられない人ね。」
「まあね。こんな景色も当分見られないけど。」
「最後って訳じゃないわ。また来ましょう。」
「うん。……そろそろ帰るか。」
「うん。」
二人は立ち上がった。
「オールジー、あれやってよ。ギューンって急降下するやつ。」
「あ、あれ?あれは……当分いいわ。」
「そう?楽しいのに。」
「また今度ね。そうだ、ダンスして帰りましょ。」
「ダンス?」
「ええ。ほら、ラウル。そっちの手をこっちに。」
「こう?」
「そう、ゆらゆら……ふらふら……楽しいじゃない!」
「ゆらゆら……ふらふら……本当だ、楽しい!」
「ゆらゆら……ふらふら……。」
「ゆらゆら……ふらふら……。」
二人は空中でゆらゆらと回転しながら、光の街へと下りて行った。




