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日常の風景  作者: 彩 智晃
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ある男の休日

2019年8月25日午前11時 休日


これは、ある男の日常を日記のように綴った物語である。

今日の天気は晴れ。昨日の埃の塊のような雲が、掃除機で一片残らず、吸い取られたような快晴。朝食をとり、いつものようにNHKラジオを聞きながら、読書をしている。

時刻は午前11時。そろそろ昼食の用意をする時間だ。読みかけのページに栞をはさみ、とじる。冷蔵庫の中身を確認しようとして、肉や魚、野菜のストックがなくなりかけていることを思い出す。

そういえば、朝食を作ったときに買い物に行かなければと思ったのだった。本当なら、昨日の午前中や夕方に行くべきだったのだが、一日続いた霧のような雨のせいでどうしても外出する気になれなかったのだ。

…ふぅ。しかたない。

ウォークインクローゼットに入り、プライベート用のカシオジーショックをつける。仕事用鞄からプライベート用の鞄に(タウンリュックというタイプだ)、財布、小銭入れ、免許書、名刺入れを移し、スマートフォンとスポーツタオルをさらに入れる。

玄関に行き、車のキーをとる。ドアに鍵をかける。一度、ドアノブを回してロックを確認する。

エレベーターに乗り、そのまま1階へ。このマンションは1階部分にも車の駐車スペースがある。512の駐車スペースに向かう。リモコンキーでロックを解除する。

車はホンダのシビックタイプR。エンジンはK20A。2リッター、直列4気筒自然吸気エンジンでは、今でも屈指の名機だ。

ガチャ。ドゴッ。

室内に入るときの、ドアの閉まる音も気に入っている。

キーをシリンダにさし、クラッチペダルとブレーキベダルを深く踏み込みながら、エンジンスタートボタンを軽く押す。

キュキュ、ブゥーッ…。

マフラーから低めの排気音が心地よく響いてくる。しばらくその音を楽しみながら、ふとトリップメーターを確認していく。

そろそろ、オイル交換の時期か。食料品を買いに行く前に、オイル交換に行くか。

クラッチペダルとブレーキペダルを踏み込み、サイドブレーキを解除する。ギアを1速に入れる。ギアは軽い力でスコッと入っていく。シビックをゆっくりと発進させる。目の前の県道を左折する。そのまま、国道沿いのカー用品店(全国展開しているオレンジの看板の…ね)に向かう。

日曜の昼前というだけあって、道は混雑している。こまめにシフトチェンジを繰り返しながら、車の流れにのっていく。

日曜のカー用品店の駐車場にしては、奇跡的に駐車されている車は疎らだ。いつもなら、空港ラウンジの手荷物検査のように、粛々と順番を待たねばならないオイル交換も今日は早くすみそうだ。

駐車スペースの一つにシビックを停める。ロックをして、店内に入っていく。

店内の入り口からほど近い場所に、オイルとエレメントの棚がある。

確かエレメントも交換だったな。一応、カタログでオイル粘度とエレメントを確認するか。

オイルの棚の一角に、カタログが置いてあるコーナーがある。そこに目を向けると、黒髪セミロングの女が、カタログを真剣な表情で見つめている。

カタログコーナーには、カタログが数冊、いらなくなった電話帳のように無造作に重ねられていた。そこまで広いスペースではないので、必然的にその女の隣でカタログを開く。

メーカーのページからシビックの情報が載っている部分を探す。ほどなくして、目的のページが見つかる。指でなぞりながら、必要な情報を頭に入れていく。

「5Wー30の…Hー21か…」

カタログを閉じて、目的のオイルが陳列してある棚に向かって歩く。いくつかのオイルから性能と値段の最大公約数的な商品を選ぶ。その近くの棚に、エレメントもあったので一緒に持ってレジに向けて歩いて行く。そのとき、カタログコーナーでカタログを睨んでいる黒髪セミロングの女を視界の端にとらえた。たぶん、オイルとエレメントの調べ方がわからないのだろう。一瞬、声をかけようかとも考えたが、変に警戒されても面倒だと思い、その考えを思考の片隅に押しやる。

ちょうど、黒髪セミロングの女の後を通り、レジに進む。

会計をすませると、すぐにオイル交換の作業に入ることができるということで、車を2番ピットにまわすように言われる。

2番ピットに車を停め、整備師に会釈をするとそのまま、待合コーナーに入った。ソファに座り、溜息を一つついた。

やはり、声をかけてもよかったかもしれないな。

待合コーナーでは、クイーンが愛について歌っていた。

読んでいただき、ありがとうございます。よかったら評価等お願いします。

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