黒き扇情の真実
※すいません!!この話と次の続きの話を近日中に内容を変更します。読んでくれている方々、読んでくれた方々には本当に申し訳ないです…!
因みにこの回は、戦争の話で、人が死ぬ描写が少し入っています。
なるべく遠回しの表現にしようと書いたんですが、苦手な方は注意して下さい。
ちなみにこの話は読まなくても、続きのお話が分かるようになってるので大丈夫です。
……
最低だ……アンを泣かせるなんて……!!
こんな俺がアンに触れていいわけが無かったのに……!!
アルファルドの言う通りだ。
俺は綺麗なアンを目の前にしてめいいっぱい背伸びをしていた。ずっと自分の事でいっぱいいっぱいだった。
アンがマイヤーズ団長と俺の事を不安に思っていただなんて考えもしなかった。いくら直属の上司だからってマイヤーズ団長は女性だ。アンの気持ちを何も考えず行動したばかりか、嫌がるのを無理やり迫った俺は最低の大馬鹿野郎だ……。
アンの前では背伸びしてカッコつけてたけど、結局アルファルドの存在に余裕を無くして自滅するなんて、本当ざまぁないな……
―――俺が騎士団に入隊して仕事に慣れてきた頃、やっとアンに会えたのもつかの間、戦争が始まった。
王都出立前日にアンと想いが通じ合った事で、俺は余計に戦争を早く終わらせたかった。再びアンに会う事だけを希望に、俺は来る日も来る日も先陣を切って戦い続ける。
一年半は長かった……。俺は一体何人の敵を切ったのだろうか。
初めて人の命をこの手で奪った時から、俺の中で何かが変わってしまった。
国を守るため、家族を守るため、アンを守るため……
そう自分に言い聞かせてはまた多くの命をなぎ倒す。
その度に自分の手が血に染まり、いくら洗って綺麗にしても汚れは落ちていないように思えた。
俺が奪った命の数だけ、一生消えない心の染みは広がっていったのだ。
半年が過ぎた頃、俺の隊の隊長を勤めていたマイヤーズ団長に異変が起きてしまった。酷く体調を崩して指示すらまともに出来なくなってしまう。
いつも男よりも男らしく振る舞っていたマイヤーズ団長だから皆忘れていたが、彼女の中身は繊細な女性だったのだ。
信頼していた部下の死を何人も見届けては悲しみに浸る暇もなくまた敵の命を奪う為に部下に指示を出す。一介の下っ端騎士である俺には想像も出来ないほどの責任や重圧がのしかかっていたのだろう。
その頃、常に隊の最前線にいた俺の心もすでに壊れていたのかもしれないが、アンに会うという希望がまだ地に足をつけて立つことを支えてくれていたのだと思う。そして、初めに俺と共に第一線にいた仲間は誰一人として並んで立ってはいなかった。
年齢や階級が一番低い俺だが、誰もが俺の実力を認めてくれていた為、副隊長に隊の中心メンバーとして抜擢され共に作戦を考え指示をするようになる。
そんな俺を見てこのままではいけないと自分を奮い立たせたのか、割と時間をかけずにマイヤーズ団長は復活した。
「もう誰も仲間を失いたく無い…私が先陣を切る。反論はするな」
そうマイヤーズ団長は力強く言った。
それからは俺と共にマイヤーズ団長も最前線で敵陣を崩していく。
マイヤーズ団長が予想以上に強いからか、それとも女性だからなのか、俺はサポートに徹するようになる。その戦い方がお互い妙にしっくりきて、気がつけば変な呼び名がつき、俺たちは英雄扱いされていた。
人の命を散々奪っておいて……とてもじゃないが自分を英雄だなんて思えなかった。
自分にも何度か死の危機はあったが、無事に生きてアンの元に戻れた。
一年半それだけが頼りで希望だったのだ。
待ちに待ったアンに会える瞬間がついに来た……!!喜びで震えるなんて初めての事だった。
そしてアンを見た瞬間驚いた。
元々美人だったアンは更に綺麗になっていて、女神様なのか……?と疑うほど美しかった。
自分のこの汚れた手で触れていいのだろうか……?
一瞬自分の手を確認したら、また赤い血が付いている感覚に襲われた。
自分の手が怖くて気持ち悪く思えたけれど、いつぞやかアンに触れずに距離を取った為に不安にさせてしまった事を思い出す。
俺は何も無かったような笑顔を浮かべて、アンの手が汚れないようにと願い、恐る恐る触れた。
その時からなのか、俺は自身の心に染み付いた汚れたものに蓋をして、アンに見合うような男として振る舞い彼女の手を取り続けた。
戦場での復興支援もあったけれど、アンと中々会えなかったのは俺の心の葛藤のせいもあった。
離れている間、たまに手紙のやり取りをしていたけれど、アルファルドの名前が入っているとどうにも不安と嫉妬でぐちゃぐちゃになる自分がいた。
王太子の側近をしている公爵子息のイケメン。
どこを取ったって俺に勝てる所が無い。
そのスペックだけでも凄いのに、アンの手がけている文房具のデザインを任されていた。
アルファルドは以前生徒会にいた先輩だ。生徒会の皆はアンに好感を抱いていたが、その中でもアルファルドは確実にアンに懐いていた人物のうちの一人だ。
今すぐ仕事をやめて欲しい。
そうアンに言いたい自分が情けないと思った。
彼女の好きな事を奪って何が婚約者だ。
アンは野山を駆け回るように、好きなことをやっている時が一番輝いていた。
生徒会の仕事は大変そうだったが、きっとやり甲斐があったんだろう。
あの頃、活き活きと頑張るアンを見るたびに胸が張り裂けそうな程綺麗だと思った。
今の仕事も楽しそうにやっているから、きっととてつもなく綺麗で輝いているんだろう。そのアンとアルファルドは一緒に仕事をしていると思うと……ぐはっ!!想像したくもない……!!
いや、俺は自分が出来る事をやるしかない……。
それにしても総長にはいつなれるんだろうか…。
俺の爵位と歳で、第一騎士団の副団長になれる事すらすごいと言われたけれど、アルファルドを見ていると焦ってしまって仕方がない。
俺はマイヤーズ団長のフォローと言う名の、団長の座を虎視眈々と狙うような仕事をこなしていた。
ふと思ったけれど、アンから好きだと言われた事は今まで一度も無かった。俺がプロポーズした時にお返しで途切れ途切れに愛してると言われたくらいだ。
汚れてしまった俺は、これから先アンに好きだなんて言われる事があるのだろうか……。
その思いをかき消すように更に仕事に没頭して、気がつけば戦後から一年が経ってしまった。
明日からは隣国へ向かう豪華客船に乗って、王家主催のパーティーがある。
久しぶりにアンに会うからしっかりしなくちゃな…。
暗いですね!本当すいません!!
名前間違えまたしてしまいました!!汗
誤字脱字報告と共にありがとうございます!!