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〈72〉

「実験はここまでにしておこう。君たちは殺処分だ。飼い主を殺そうとしたペットは死ぬべきだろ?」


 ニヤリと唇をつり上げて柳が笑う。


 見渡す限りが膨れたビー玉に埋め尽くされて、ひどい圧迫感をもたらしていた。


 柳の姿なんて、今はどこからも見えそうに無い。


「……まずい状況かしら?」


「そうだね。将吾、時間は?」


「おん? まだまだかかるぜ? あきらめて逃げんのか?」


「それも良いが、逃げ場は無いみたいだよ」


 比較的小さなビー玉がひび割れて、翼のある化物が飛び立っていく。


 小型の翼竜とでも言うべき化物が、合計40体ほど。


 続けてティラノサウスやケルベロス、ミノタウロス、やまたのおろち……。


 見渡す限りの空間が、化物に覆われていた。


「結花、俺たちの前に火の壁を!!」


「はい!」


 大慌てで結花が詠唱に入るものの、発動までは時間が必要になる。


 唯一の逃げ場は背後にある穴なのだが、ネネの居ない状況で飛び込むのは気が引ける。


「……いや、飛び込ませたいのか?」


「どういう意味かしら?」


「ヤツは真っ先に上への逃げ道をふさいだ。それなのに翼竜たちを背後へ回り込ませないのは不自然じゃないか?」


「…………」


 目的はわからないが、穴に飛び込むことが良い結果を産むとは思わない。


 だとすれば、


「手当たり次第に倒すしかないな」


「そうね」


 榎並さんがニヤリと笑い、詠唱を続けながら結花が頷いてくれた。


 手の中にあった盾を消して、背丈よりも長い剣に切り替える。


「剣はあまり得意じゃ無いとか言ってる暇も無さそうだな」


 はぁ、と小さくため息を吐き出して、化物たちの先頭にいたツキノワグマ目掛けて走り出した。


 両手を大きく掲げた化け熊が、鋭い爪を前に襲い来る。


ーーそんなとき、


「なんだ……?」


 不意に化物たちが、一斉に動きを止めた。


 先ほどまで感じていた無数の呼吸音がパタリとやんで、周囲に気味の悪い静けさが訪れる。。


 化物たちはまばたきすら忘れ、翼竜たちも重力に導かれて、地面へと叩きつけられている。


 どうみても、異常な光景だった。


「きさまら、なにをーー」


「燃えてください!!」 


 そんな化物たちの向こうから聞こえてきた声にかぶせるように、結花が魔法を発動させる。


 一瞬の判断で狙いを変えたのか、俺と柳が居るであろう場所をつなげるように、炎が燃え盛った。


 炎に包まれた化物はピクリと動くことも無く、小さなビー玉へと戻っていく。


 大人しくなる炎の向こうに、目を見張る柳の姿が見えてくる。

 驚いている表情を見る限り、柳が何かした訳ではないのだろう。


 そんな彼に銃口を向けながら、俺は背後へと声を飛ばした。


「将吾か?」


 俺や榎並さん、結花でもない。


 消去法で選んだ問いかけだったが、どうやら将吾でも無いらしい。


「いや、じいさんだと思うぜ?」


「……なるほど」


 直前に渡したデータが役だったのだろうか?


 それとも、生放送(・・・)の結果だろうか。


「そろそろ種明かしの時間だな」


 拳銃を片手で構えなおして、空いた指先をパチンと鳴らした。


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