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69/73

〈70〉

「柳さんたち国の上層部は、俺たちに“力”を覚えさせて、ここの解析を進めたかった。そうですね?」


「……あぁ、その通りだよ。それがどうかしたのかね?」


「いえ、確認ですよ。将吾も橘理事長も信頼出来ますが、盲目に信じるのは違いますから」


 口の中で小さく笑って、俺は柳に向ける拳銃を握り直す。


「問題はその後ですよ。解析を進めて、“力”を蓄えて、どうするつもりですか?」


「おや、それは意味のある質問かい? “力”のある者が次にすることなど決まっているだろ? 支配だよ」


 口元をゆがませた柳が、穴の下にある宝石の町を流し見る。


 両手を大きく広げて、楽しげに笑って見せた。


「このビルも、もとは魔物の巣窟でねぇ。それが今では、3階までの“支配”が終わったよ。


 素晴らしいと思わないかな?


 ここを分析して“力”を得た。宝石の町も我々に“力”をもたらすのだよ。次は簡単そうだ。知性のある者を監禁でもすればすぐに新たな“力”が得られそうだ」


 どこまでも傲慢で、どこまでも排他的に、


「人類は常に進化している。我々こそがこの世界を支配するにふさわしいと思わないかね?」


 すべてを見下すような色を瞳に浮かべた柳が、楽しげに笑い続ける。


 自分こそが神だとでも言うような、そんな仕草。


 やはり彼を好きになることなど出来そうもない。


「おっと、忘れていたよ。これもこのビルの成果だったね」


 そんな言葉と共に、柳がポケットからビー玉を投げ捨てた。


 柳がその場を飛び退いて、ビー玉から距離をとる。


「なるほど、化物は俺たちを支配するために使うんですね」


「その通りだよ。ちなみにだが、支配する我々に君たちは含まれて居ない。支配は特権階級だけに許された“力”だからね」


 膨れ上がるビー玉の向こうから、不快な声が聞こえていた。


 天井に届くほどにまで膨らんだビー玉が砕け散り、中から化物が姿を見せる。


 それは入学式の日に、体育館で見たティラノサウルスに似た化物。


「セーフティーは解除してあるよ。安心して、死ぬと良いよ」


ーーGrooooooooooo!


 柳の声に応えるかのように、化物が甲高い叫び声をあげていた。


「将吾、時間は?」


「20分ある。俺はここを離れられねーぞ?」


「わかってる。任せておけ」


 将吾に助けられたらあの時とは、違うからな。


 そんな言葉を飲み込んで、俺は迫り来る化物目掛けて走り出した。


 拳銃を消して盾を構える。


 かみ殺してやるとばかりに迫る化物の牙が、盾とぶつかり合って、体全体に強い衝撃が駆け抜けていった。 


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