<32>パートナーを決めた日3
「さてと。将吾は、ペアの相手ってどうするつもりだ?」
「ん? 俺とオッサンで良いんじゃね? オッサンは俺とじゃ嫌か?」
「そんなことはないさ。よろしく頼む」
「おうよ」
一瞬だけ怯えたような表情をした将吾が、男らしい笑みを浮かべてみせる。
「あー、やっぱりスーグラさんと将吾くんかぁ。そうなるよねー」
「だねー。それじゃぁ、あたしは優以で我慢してあげる」
「えー、何それひどいー。私は澪で妥協してしんぜよう」
クラスメイトたちも、比較的スムーズに話がまとまっているらしく、そこかしこで楽しそうな声が聞こえていた。
やはり、男同士、女同士で組む者が多いようだ。
「どんな敵からでも、俺が守ってやるよ。ペアに、成らないか?」
「え? あっ、ごめん。無理」
同級生の勇者、あえなく撃沈。
この1ヶ月で必死にアタックしている姿は見ていたが、無理は辛いな。
灰のように崩れ去った彼は、ハイライトの消えた瞳でぼんやりと空を眺めていた。
ペアごとに教室から去って行き、宇堂先生の前に順番待ちの長い列が出来上がる。
「ん……?」
急ぐ必要もないからと列を眺めていた俺の視界に、ひとりの少女の姿が映り込んだ。
彼女はガイコツのキーホルダーを胸の前で握りしめながら、クラスメイトたちに向かっていく。
「あの、私とペアを組んでくれませんか?」
「え? あー……。ごめんね、水谷さん。先約があって……」
「い、いえ、無理に聞いちゃってごめんなさい」
小さくうつむいた彼女が、無理に貼り付けた微笑みを浮かべていた。
ひとりでいる人。3人のグループ。5のグループ。
相手が男であっても、彼女は構わずに突撃していた。
「そうですか……。ごめんなさい……」
瞳を淡くぬらしながらも、彼女は微笑みながらクラスメイトたちに話しかけていく。
水谷 結花。
初日のテストで転んだ、あの少女だ。
このクラスで唯一"力”を発現出来ていないのが彼女だった。
気性や態度に問題はないが、座学の成績も下の方だと聞く。
「ごめん。守れる自身がないからさ。ほかの人を……」
「そうですね。足でまとい、ですもんね」
「あっ、いや、そういう意味じゃなくて――」
「良いんです。自分でわかってますから。声をかけちゃってごめんなさい」
ペコリと頭を下げた彼女の瞳が、悲しげに揺れていた。
「将吾。悪いんだが、ペアは別でも良いか?」
「ぅぇぃ!? どうしたんだよ、いったい!? ……あー、そういうこと」
俺の視線を追いかけて、将吾が小さく目を伏せた。
「そうだよな。オッサンってそんな感じだもんな」
ふー……、と大きく息を吐き出して、俺の背中を押してくれる。
「いいぜ。かっこいい役目は譲ってやるよ。俺も可愛い子ナンパすっかな」
「悪いな」
「良いって、良いって。さすがにあれはほっとけねぇわ」
小さく肩をふるわせた将吾が、俺の側を離れていった。
ゆっくりと彼女に近付き、優しく微笑む。
「水谷さん。俺で良かったら、ペアになってくれないかな?」
「ぇ………?」
ガイコツのキーホルダーを胸に抱いた彼女が、大粒の涙が浮かんだ瞳で俺の顔を見上げていた。




