表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/73

<25>新生活2日目4

「今見た通り、普通にナイフを当てても、当該生物――モンスターは切れん」


 もう1度飛びかかってくるスライムを避けて、今度は右足で大きく蹴り上げる。


 ペトン、ポテン、とスライムが地面を弾んでいく。


「ここからが本番だ。よく見ておけ」


 スライムに対して半身になり、左手を体の後ろに引いた先生が、切っ先を水平に構えた。


 指先から白い湯気のような物が溢れ出し、ナイフの周囲を包み込んでいく。

 

「オーラ、魔力、気、超能力、生体エネルギー。おまえたちの感覚で好きに呼べ。脳科学の権威がたどり着いた、人類の可能性だ」


 みたび飛び込んできたスライムを先ほどまでと同じように避けて、下段から白く染まったナイフを切り上げる。


 切っ先が中心をとらえ、薄い紙を裁断するかのようにスパリと切り裂いた。


 2つに裂けたゼリー状の体が、ベチャリ、と地面に落ちる。


 地面に溶け込むかのように、消えていった。


「効力は今見た通りだ。この力は物だけでなく、自分にも付与できる」


 先ほどよりも大きな湯気が立ち上り、先生の体にまとわりつく。


 先生が軽く膝を曲げたかと思えば、一瞬の後に、その体が猛スピードで舞い上がっていた。


 見上げるほどの高さにまで到達した体が、俺たちの前に落ちてくる。


「「「…………」」」


 俺の見間違いでなければ、先生の体は校舎よりも高く飛び上がっていたように思う。


 少なくとも人類の動きじゃない。


「訓練を積めば、このような事も可能になる」


 ズレた眼鏡を整えて、先生が白い力を引っ込めた。


「この力は特別な物ではない。得手不得手はあるが、このクラスの者であれば全員が出来るようになる」


「「「…………」」」


 呆気にとられる俺たちを見渡して、先生が小さく肩を揺らす。


「榎並、お前はもう出来るな?」


「ええ」


 ハッと振り返った先に見えたのは、強い存在感を示す榎並さんの姿。


 白い湯気などをまとっている訳ではないが、先ほどまでの先生と同じような気配が漂っていた。


「俺は見せるために色を付けたが、本来は無色透明の物だ。これが出来たものから伍長と組み手を行う。榎並は次に進め」


「わかったわ」


 1度周囲を見渡した榎並さんが、体育座りをするクラスメイト4人の頭上を飛び越えて、グラウンドに降り立った。


 飛び越えられたイケメンたちが、幽霊でも見たかのような表情を浮かべている。


「私と殺し合うのは、アナタかしら? アナタは死ぬ役目なのだけどそれでいいわね?」


「あははー、美少女相手でもそれはイヤかな。お手柔らかに頼むよ」


「なら、精一杯避けなさい」


 物騒な言葉と共に、榎並さんがグラウンドの中央へと歩いていく。


――パチン!


 突然、手のひらを叩く音が聞こえきた。

 振り向いた先には、表情を引き締めた宇堂先生の姿がある。


「成川、前に出ろ」


「……はい」


 現状把握も出来ないまま宇堂先生の隣まで進み出る。


 クラスメイトの注目を浴びながら、俺は1本のナイフを受け取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ