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21/73

<21>テストのあとで6

 画面から視線を外して将吾の瞳を流し見る。


「他のクラスを見るときは、ここを指で押せばいいのか?」


「ん? おうよ。ってオッサン、動画再生したことねーの?」


「……知識だけはある」


 残業のせいで動画を見る時間なんてなかったからな。


「オッサン的にはきれい系が多い方が好みだよな?」


「ん? いや、俺はどっちで――「こっちだせ!」」


 将吾が食い気味に画面に触れた。


 映し出されたのは、入学式の案内をしてくれた美人教師と、1組の生徒たち。


 こちらは教室で行ったらしく、ふたまわりほど小さな化物が、机や椅子を踏みつぶしていた。


『くっ、くるなぁああああああああああ!!』


『いや――――――!!!!!!』


 真っ先に狙われたイケメンが頭から飲み込まれた。


 天井を見上げた化物の口から、骨を砕く音が漏れている。


 クラス全体に唖然とした恐怖が満ちていた。


『ひぅっ……』


『やだよ……、#梨花__りか__#を返してよ……。たったひとりのともだちなの……』


 瞳に絶望を宿したまま、ひとり、またひとりと、化物に食われていく。


「これは、ひどいな……」


 見栄えが、映像が、演出が……。


 正直、目をそらしてしまいたくなる。


『全員赤点ね』


 1組の動画は最後まで見せ場らしいものもなく、ずっと目をそらしたくなる光景が広がっていた。


 全員が食われてテストが終わり、担任が数十個のビー玉を投げる。


 その中からイケメンや美少女たちが出てきたものの、誰しもが恐怖や絶望、涙でぐしゃぐしゃだった。


 将吾に負けず劣らずのイケメンたちが、今は見る影もない。


(これはちょっと……)


(悲惨)


(ホラーだけど、なんかあんまり……)


 流れるコメントも数が少なく、哀れむような物が多かった。


 命があったのはなりよりだが、『稼げる冒険者になりたい』『有名人になりたい』と夢を抱く彼らには、致命傷とまでは行かなくても、重たい足枷になるだろう。


「俺らがこうならなかったのは、的確な指示をしたオッサンのおかげだな」


「いや、俺を助けた将吾のおかげだろ?」


 今見た物を頭から追い出して、将吾と顔を見合わせる。


 ふー……、と大きく息を吐き出して、ビールの缶をあおった。


 彼らもまだ高校生。


 足枷をはずすチャンスは、いくらでもあるだらう。


(すげー、逃げ切った)


(可愛い子をかばうとか、かっこよずぎだろ!)


(俺、スーツとサングラス買ってくる)


 俺たちのクラスは彼らよりも、ほんの少しだけ前に進めている。


 向けられた賞賛の声が、今は素直に嬉しかった。


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