〈11〉美少女と銃3
先ほどの銃やナイフは、何だったのか。
なぜ彼女たちは、殺し合いのような事を始めたのか。
息をのんでいた同級生たちは、俺を含めて誰も理解など出来ていないだろう。
それでも1つだけわかるのは、今のやりとりが現実で行われていたと言うこと。
動画でも、ゲームでもなく、目の前で繰り広げられていたと言うこと。
確かにパイプ椅子ははじけ飛び、床には穴があいた。
『今のが人類の可能性、化学者たちの集大成だね』
スカウトの時に橘さんから聞いた言葉が、不意に頭を通り過ぎていく。
ここは冒険者を育成する高校で、見せてもらった動画はすべて現実。
大金を稼げる、命をかけた仕事。
紫の炎が出せる、モンスターのいる場所。
「俺から1つアドバイスだ。強くなれ。英雄になれるのは、一握りだけだ」
思考の海を漂っていた俺の耳に、宇堂先生の声が聞こえてくる。
先生はゆっくりと榎並さんに近づき、なぜか彼女を米俵のように担ぎ上げた。
「えっ? ちょっと……!?」
暴れる元気もないのか、榎並さんがぐったりとしたまま運ばれていく。
時折、スカートがふわりとゆれて、張りのある太ももが見える。
その先は残念ながら、見えそうで見えなかった。
「デモンストレーションをした榎並は不参加だ」
宇堂先生はそのまま壇上に飛び乗って、榎並さんを優しく下ろす。
俺たちの方を振り返り、
「入学祝いだ。テストを始める」
ニヤリと笑った。
その笑みは、デモンストレーション中に何度か見せていたもの。
何をするのか見当も付かないが、とてつもなくやばい気がする。
「俺は手を出さない。各自、自由に動いて良い」
先生が懐に右手を入れて、するりと何かを取り出した。
手の中にあったのは、……青いビー玉?
「始まりのチャイムだ」
鬼畜な笑みを浮かべたまま、先生が地面に向けてビー玉を転がす。
俺たちが座る椅子の隙間に入り込み、カランカランと音を立てながら転がっていく。
「離れろ!」
「絶対やばいやつだぞ!」
全員が一斉に席を立ち、誰しもがビー玉から距離を取った。
だが、状況は悪化していく。
「なによ、これ……」
俺たちが取り囲む円の中心で、ビー玉が見る見るうちに膨らみはじめた。
パイプ椅子を蹴散らして、周囲に広がっていく。
スカウトの時に見せられたスライムが出てくるビー玉とは、明らかに大きさが違う。
50センチ、1メートル、2メートル……。
「ちょっ……。ふざけんなよ!?」
気が付けば背の高さなど優に超え、先端が天井に届いていた。
吊り下げられた照明に触れて、ビー玉にひびが入る。
上の方からゆっくりと、崩れていく。
見えてきたのは、大きく裂けた口に、びっしりと生えた鋭い牙。
赤黒いうろこが覆う皮膚に、爬虫類のような瞳。
三角形の巨大な顔。
「嘘だろ……?」
「恐竜……!?」
気が付けば、ティラノサウルスに似た生物が、そこにいた。