03 ディバインライト
「なぜ、オレは『マコ』なんですか?」
「て、哲学的な質問だね。」
ネオが戸惑う。そういうことではない。
「ここまでリアルなゲームなら遊び方も変わってきます。ログアウトして男キャラに作り直してきます!」
女キャラを操作して遊ぶことと、女キャラになりきって遊ぶことは全く違うことだ。分からない人には大体同じに聞こえるだろうが、全く違う!
『スプリームファンタジー』では、オレが女性であるというネオの勘違いを面白がって、否定もせずそのままプレイしてしまったオレだが、女になりたい願望がある訳では無い。
「待って、マコちゃん!ゲームの世界だと思ってほしいとは言ったけど、ゲームじゃあ無いんだ!」
オレは、ネオが『そう?じゃあログアウトのやり方を教えるねー』などと返事をしてくれないか、淡い希望を抱いていた。
これからネオが何を言おうとしているか、想像はつく。
嘘をついてしまったとでも思っているのか、ネオがおずおずと続ける。
「この世界では、『スプリームファンタジー』と同じ魔法が使えるとか、存在する種族や文化が同じっていう意味で言ったのであって、その、ごめん。」
正直に言うと、気付いていた。
こんなリアルなゲームがあるはずが無い。
「ここは、現実なんだ」
分かってはいたが、はっきりと言葉にされてしまうと、やはり衝撃的だ。
「ちなみに、ログアウト……じゃなくて、元の世界に戻るにはどうすれば?」
「僕も知らないんだ。たぶん、できない。」
めまいがした。
なぜこんなことに。
そういえば、この世界で、オレはネオに起こされたのだった。ネオなら何か知っているだろう。
「オレは、なぜここに?」
ネオは、ばつが悪そうに答える。
「僕が召喚したんだ。いや『創造』のほうが合っているかな。」
「……そーぞー?」
「実は、僕がこの世界に来たのは、一週間前。ゲームの中でマコちゃんにフられた直後のことだ。」
ネオは声のトーンを上げ、話し続ける。
「『マコちゃんはいいひとだね』っていう最後のチャットは届いたのかな。震える指で送信したら、めのまえがまっくらになって、気が付いたらもうこの世界にいたよ。そして、僕のまえにはこの世界の神様が居た。」
……神様?さらっとトンデモナイ人物が登場してきた。
「白いローブを着たサンタクロースのような見た目の神様に言われたよ。
『この世界とそっくりに作られたあのゲームの世界を愛し、かつ、元いた世界になんの未練も無い人間。そう、君のような人間を探していた。』
『わしの知識と、『創造』の力を引き継ぎ、世界を司る神となるのじゃ』
『わしは引退するから、この世界のことを頼む。じゃ、よろしくの。』ってね。」
ちょっと何をいっているかわからない。
なにやら、オレとはだいぶ状況が違ったようだ。
「えっと、神様に呼ばれて、知識と能力をもらって、この世界の新しい神様になったということですか?」
「そうなる。」
とんでもないことを言っているが、ネオは嘘をつくような人ではない。
異世界転移して神様になりました?
荒唐無稽すぎて、逆に冷静になってきた。
「全知全能ってことですか。」
「うーん。知識については、だいたいの物理法則と、この世界のニュースが頭に流れ込んでこんでくるような感覚だった。なんでも知っているとはとても言えないよ。あと、『創造』の力は、かなり制限が厳しい。無から有を生み出す力ではあるけれど、すでに存在するルールや物を壊すことは一切できない。自分を含め、歴代の神様が作ったモノは壊せないんだ。」
よくわからなかったが、神様の力には制限があるらしい。
全知全能からは程遠いといった様子だ。
「先代の神様は、この世界にある召喚魔法と『創造』の力を組み合わせ、『スプリームファンタジー』の世界にあるものを、そのままのこちらの世界に『創造』する理論をつくりあげた。僕はその理論を使って、マコちゃんを『創造』したんだ。」
「へえー。」
神様がうんぬんと言っていた割には、結局、『召喚魔法を使った』に落ち着いた気がする。
もっと詳しく教えてもらっても、オレにはよく理解できないかも知れない。
とにかく、オレはネオに召喚されたってことか。
そうなると、召喚された理由のほうが気になってきた。
「で、なぜオレを召喚したんです?」
返答によっては、糾弾せねばなるまい。
「実は……この世界では、『勇者』たちが魔族を滅ぼそうとしているんだ。」
おお、一転してわかりやすい単語が出てきた。ゲームと同じ設定だ。
ゲームでは『勇者』という職業もあって、やや器用貧乏なステータスだが、魔族キャラやモンスターに対して攻撃力が跳ね上がるスキルが使えるので人気があった。
このまま、オレの知識でも理解できる話が続いてくれると、混乱しないので助かる。
「そして、僕は魔族の王、いわゆる『魔王』と呼ばれている。」
オレの知識でも理解できる話なのに、助からなかった。
導入部分が長くなって申し訳ありません。
ここまでを要約すると、
「君はゲームキャラのまま異世界に召喚された!」
「ゲームの魔法が使えるよ!助けて!」
「実は、僕はこの世界じゃ魔王です。」
うーん。3行で済ませてしまえばよかったかも知れません。




