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【第64話】助っ人

 結月が、工場の施設内に入るのとほぼ同時に男が2人、工場の敷地へと侵入してくる。

 作業服に身を包んだこの男達は、水流操者から発信された異常コールに気がついたスキアーのメンバーであった。

 一人は、ひ弱そうなやせ細った体で、顔はロバを擬人化させたのかと思うほどロバに似ている。

 もう一人は、そんなひ弱な男と一緒にいるのが不自然なほどに筋肉の引き締まった体をしており、日本刀と思しきものを携えている。

 この二人に共通点があるとすれば、どちらも異様な殺気を放っているということだろう。

 それは、まさに獲物を睨む蛇のような……一般人とは、程遠いものがあった。もし、小学生が目の前にいれば、突然泣きだすレベルだろう。

 そんな異様な雰囲気を放つ男達は、工場の施設の入り口付近で横たわる水流操者──水城みずき 奈緒なおに気がつき駆け寄る。


「水城さん! しっかりしてください!」


 屈強な体をした男が、水城の身体を揺すりながらそう言う。

 ──だが、一向に水城は起きない。それもそのはず、結月の煉獄火炎でバランス感覚を失わされた上、打撃を腹に受けたのだ。数時間は気絶したままであろう。

 やせ細ったロバ男が、その状況を近くの支部に伝えるため電話を取り出した──そのとき、

 ガサッと、いう砂利を踏むような音が、工場の入り口……つまり裏門から聞こえてきたのだ。

 男が、そちらを睨むようにして見ると、そこには、高校生と思わしき少年が立っていた。

 身長170程度のその少年は、なにかを探しているような、そんな表情をしながら工場の敷地へと入ってくる。


「おい、コラ坊主! てめぇなに無断侵入しとんじゃ! ここは立ち入り禁止じゃ! さっさと消えろ!」


 屈強な男が、そう怒鳴り散らす。が、少年は動じることをせず、なにもなかったように、そのまま工場の施設の方へと歩いてくる。

 有り得なかった。

 普通、帯刀している男に怒鳴られれば……いや、一喝だけでもされれば、退くのが当たり前だ。だが、目の前の少年は退くどころか、こちらへと突き進んでくる。

 その()()()()()()()()()少年の行動に屈強な男の方が、思わず立ちすくんでしまった。


「て、てめぇ! これが見えねぇのか!?」


 男は、これでもかと日本刀に手をかける。が、少年は怯えることも、退くこともせず、目の前の男を睨みながら歩いてくる。

(な、なんだ!? この異様な雰囲気は……っ!!)

 目の前の少年は、コツコツと足音を響かせながら確実に近づいてくる。

 屈強な男は、あまりのその異様な雰囲気と恐怖に剣を抜き……すかさず、()()()()()

 次の瞬間、剣を納めたと同時に発生した衝撃波のようなものが、少年を襲う。──はずだった。

 その衝撃波は、見事にも別の衝撃波に打ち消される。

 この異常な光景に驚いたのは、他でもない、少年──朝霧疾風であった。

 朝霧は、暴風を生み出す竜の神翼(ドラゴン・ウィング)なるもので、敵の衝撃波を打ち消そうとした……のだが、発動する前にそれは、消し飛んだ。


「──ったく、てめぇは……。首を突っ込まなければ良いものを……」


 背後から、そんな聞き覚えのある声が聞こえた。

 それは、意外な人物で、なぜここにいるのか、なぜ助けてくれたのか。朝霧には、理解できない部分が多々あった。

 朝霧は、そーっと後ろを振り向くと、そこには予想通り、木刀を右手に持ち、無能力者最強と謳われる高校生、神宮寺 洸大(じんぐうじ こうだい)の姿があった。


「な、なんでお前が……」

「勘違いすんな。別にお前の下についたわけじゃねぇ。これはケジメだ」


 神宮寺は、そう言い放つ。

 それは、どこぞの最強不良ストーリーの主人公のようだった。朝霧は尋ねる。


「ケジメ?」

「あぁ……公安の馬鹿女が死んだ理由に、俺の名前が挙がんのはご免なんでね」


 神宮寺の言ってることは、とても簡略化しすぎていて、端から見れば何を言っているか全く分からないだろう。

 ──だが、結月の一連の行動を知っている朝霧は、なんとなくそれを理解した。


「なるほどな……」

「それより、こいつらシメとく間、夕霞を頼めるか。朝霧?」

「アンタに頼まれなくても、そうさせてもらう」


 朝霧は、神宮寺にそう言うと、工場の施設内へと走る。が、それを防ぐかのように屈強な男が立ちふさがる。

 フットボールでもしてそうな、そのドデカい身体をぶっ飛ばして強行突破というのは、無理があると朝霧は直感した。

 が、次の瞬間、そんな巨体は神宮寺の木刀から生まれた衝撃波によって吹き飛ばされる。

 朝霧は、その一瞬の隙をかいくぐり施設内へ走った。


「神宮寺。良い度胸だな。これは、大京学会からの宣戦布告と考えていいのか?」


 屈強な男は、腹を手で押さえながら立ち上がると、そう言った。その額には汗が浮かんでいる。


「宣戦布告、か。そいつはテメェらにとっても俺らにとっても本望じゃねぇだろ? 分かってんだよ、こちらとらな」


 神宮寺は屈強な男にそう言い放つ。それはイヤミに塗られた声音だった。

 だが、屈強な男は言い返せない。神宮寺の言うことは、全て正しいのだ。


 スキアーと大京学会は、その対立関係にこそ意味がある。

 もしなければ、明自党は与党になれなかっただろうし、大京学会も、全国展開できるほどまでに勢力を伸ばせなかっただろう。それは、今後も続くことだと思う。


 共依存。


 もし、片方が無くなれば、そちらを敵視する同志がいなくなる。つまり外部からの支援や援助が途絶えるということだ。

 それは、どちら側も望むことではない。だからこそ宣戦布告からの全面戦争は、どちらも避けたいのだ。

 屈強な男が完全に黙り込み数秒の沈黙が続く。

 その言い負けたことを証明するかのような沈黙を神宮寺は感じながら、ニヤリと微笑む。と、同時に施設の入り口へおおよそ人間とは、思えない挙動で移動する。


「さて、ここから先は通行止めだ。もし通るってんなら、俺に殺されてからにしろクソ共が」

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