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【第57話】答えて欲しいこと

 朝霧は、目を覚ましてから少しの間、なにがなんだか分からなかった。頭がぼんやりしていて、少しの痛みが走っている。

 そして不可解なことに目の前には見慣れた天井があった。

 そう。自分の部屋だ。

 一瞬でそう理解できた。いくらぼんやりしていても、自分の部屋が分からなくなるほど、朝霧は欠陥頭脳ではない。

 まだ不自由な身体で起きあがると、台所から声が聞こえてくるのが分かった。


「気がついたか?」


 真横でそんな声が聞こえてくる。ビクッとしながら横に顔を向けると、そこには健二の顔があった。


「ハヤテ、結月さんがパトロールに出てなかったらどうなってたか分からなかったんだからな。感謝しろよ」

「え……!? あっ……」


 そこで朝霧は、思い出す。

 脳が揺さぶられたのか、ぼんやりと、曖昧な記憶しか残ってないが、確か神宮寺が人間とは思えない挙動で攻撃してきて、吹っ飛んだのは覚えていた。

 そこで朝霧は自分が軽い脳震盪だと気がつく。まぁ専門家や医者ではないので正確には分からないのだが。

 しかし朝霧はそんなことは、どうでもよかった。


「神宮寺は?」

「……? 知らねぇぞ」

「そうか……」

「──はやてっ!!」


 瞬間。朝霧の腹に何かがダイブする。うぐっ! っとなってからその何かを確認しようと腹を見ると、そこにはファンがいた。

 ファンは泣いているのか朝霧に抱きついたまま離れない。


「ふぁ、ファン……ちょっ……」


 朝霧は、いきなりのことで動揺する。というよりも苦しさのあまりもがく、と言った方が正しいだろう。


「う~~……!!」


 ファンは落ち着くどころか、更に泣き声になっていく。

 朝霧は、ワンワンと泣くファンを慰めようとするが、あることに気がつきそれどころではなくなった。ファンの身体が朝霧の身体の一部分に密着していたのだ。


「──っ!」


 だ、だめだ! それを考えれば考えるほど取り返しのつかないことに……。


 朝霧は、背徳感のようなものに襲われ、とにかくそれ以外のことを考えようとする。──が、現実はそう簡単にはいかなかった。ファンの抱きしめる力が更に強まり()()は、みるみる圧迫される。


「ちょっ……ファン! ギブギブ!」


 朝霧は、とにかくファンの体をどかそうとする。と、その瞬間ファンの体が一気に軽くなった。


「へ?」


 朝霧は、今までにないようなほど間抜けな声を出す。というのもファンの体が軽くなった──という域を越え、全く重さを感じなくなったのだ。


「ん? 別に重くない気が……」


 そんな声が上の方から聞こえる。声のする方を見ると、そこにはファンを軽々持ち上げる健二の姿があった。

 さすがにロリ体型とはいえここまで簡単に持ち上がるのか? と、疑問が浮かぶ。健二は持ち上げたファンを床に下ろした。


「あっ……いや、重いとかじゃないんだけどね……」

「あっ……変なとこに乗っちゃったとか?」

「ま、まぁそんな感じ」


 本当に変なとこにね。と、朝霧は心の中で壮絶に思ってしまった。

 と、ここでようやく脳が活動し始めたようだ。朝霧は、一番の疑問を口にする。


「そういや俺、どうやってここまで……」


 朝霧は、この寮にいること自体不思議に思ったのだ。健二にしたって河川敷から寮まで自分を運ぶのは難しいだろうし、ファンや結月は論外だし……。

 考えていると健二が口を開く。


「俺が担いできたけど……」

「健二が!? よくここまで来れたな。なにか運動でもしてんのか?」


 そう言うのも健二の身長は、朝霧よりも少し小さく体格も決して屈強なわけではない。端から見れば、もやしっ子のようだ。

 にも拘わらず、朝霧を担いできた……。人間は外見だけじゃ分からないものだと、朝霧はつくづく思う。


「まぁ、重いものを運ぶのは慣れてっから。それに俺は──」

「健二君は身体強化系能力者なのよ? 知らなかったの?」


 結月がそう答えた。

 朝霧は、ここで結月が自分の部屋にいることに気がついた。現在進行形でエプロンを脱いでいることから台所で何かを料理していたことが伺える。


「な、なるほど。なら理解がいく」


 朝霧は、違和感が全てなくなり、とても晴れ晴れとした気持ちになっていた。


「じゃあこちらからも質問。あの河川敷でなにやってたの?」


 だが、そんな晴れ晴れした気持ちも長続きはしなかった。結月から質問が飛ぶ。

 もし、神宮寺と喧嘩をしてたなんて言えば、結月にど突かれるのは目に見えていた。だからと、言って良い言い訳が見つかるわけでもない。

 朝霧は、考えをしばらく巡らす。


「……言えないなら別に良いわ。神宮寺に会ってたということは分かったから。けどこれだけでも良いから答えて……」


 結月は鬼の形相から一転し、人に何かを頼むようなシュンとした顔になる。


「神宮寺は大京学会の構成員……なの?」


 結月の質問をする目は真剣そのものだった。朝霧は、あまりのその真剣な眼差しに少し躊躇したあと「そうだよ」と答える。

 ──と、結月は勢いよく朝霧の部屋から飛び出した。


「…………な、なんなんだ?」


 朝霧は、そんな異常な結月の行動に驚き、思わずそんなことを呟く。すると、となりにいたファンと健二は、双子のように「さぁ?」と、口を揃えて言った。

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