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【第55話】おもしろいね(デジャヴ)

「はやて~。起きる時間だよ~」


 朝霧は、そんな幼い少女の声で起きる。

 小さな窓からは日差しが差し込み小鳥のさえずりが聞こえてきた。つまり、ずっと寝ていたい人にとって最大の宿敵──朝がやってきた。


「ふぁ~……。起こしてくれてありがとな、ファン」

「えへへ」


 朝霧はお礼をしながらファンの頭を撫でた。ファンは嬉しそうで心地良さそうな声を出す。

 その光景は下手すると親子のように見えるかもしれない。


「さて……じゃあちょっくら行ってくるとするか」


 朝霧は、布団から出ると制服に着替える。と、そこで気がついた。何やら美味しそうな匂いが漂ってくることを……。


「なんだ、この匂い……?」

「え? あぁ……私が朝ご飯作ったんだよ~。講習の前の腹ごしらえになればって」


 ファンは、自慢気にテーブルの横でそう言う。朝霧はテーブルに目を落とした。すると料理が盛られた皿があることに気がついた。


「料理できたんだ……」

「千年も無駄に生きてるわけじゃないんだからね。下界の料理も一通り覚えてるんだよ」

「な、なるほど」


 少女は下界の料理も一通り覚えていると言うが、出会って間もない頃に野菜炒めを凝視していたのを朝霧は鮮明に覚えている。

 おそらく、見栄なのだろうと察した。

 ともかく見栄だろうがファンが自分を気づかって作ってくれたものに変わりない。朝霧は着替えを終えると、座布団に座りファンの作った料理を喜んで食べ始める。


 ──意外と美味い。


 ファンの作った料理は紛れもない野菜炒め。しかし、しっかり味付けもできていてファン(幼児)が作ったとは思えない一品だ。


「なにか悪口言わなかった?」

「え? ぜ、全然……」


 勘が鋭い。

 朝霧はそんなことを考えながら野菜炒めを食べる。ジーと、ファンが睨む中の朝食は、飯が進むんだか進まないんだか……。

 と、気がつけば料理も食べ終わっていた。


「朝飯ありがとな。じゃあ行ってくる」


 朝霧は、立ち上がり玄関へ向かう。玄関にあるスクバを持ち「行ってきま~す」と、扉を開けた。


「行ってらっしゃ~い」

「んー……。あっ、機械類は触るなよ」

「分かってるって」


 ムッとしながら朝霧を睨む。あはは……可愛いな。などと考えながら朝霧は、扉を閉め鍵をかける。


「さて、急がねぇとな」


 朝霧は、寮の廊下でそう呟く。と、同時に寮の階段を駆け下がり、大通りにでた。

 大通りにでるなり猛スピードで走り出す。学校までは、この大通りをずーと行けき、途中のわき道に入ると着くのだが……。


「ちょっと近道するかな」


 朝霧は、寮から百メートル程先のわき道に入ろうとする。と、その時──。


「ハヤテ~!!」


 後ろからそんな男の声が聞こえる。後ろを見ると逆立つほどの寝癖をつけながら走る健二の姿があった。


「健二か。てか寝癖ひどいな」

「あはは……。寝坊しちまってな」

「なるほど。近道すっけど来るか? 覚えとくと何気に使えるぞ」

「おぉ! 頼むわ!」

「よっしゃ、そうと決まったら走るぞ」


 朝霧は、そう言うと先程のわき道に入る。

 わき道と言っても昨夜、結月と入った建物と建物の間というようなものではなく、しっかりとした公道だ。


「次を右に曲がりゃすぐだよ。大通りだと余計な道に出ちまうからこっちの方が近いんだ」

「へぇ……」


 会話をしながら、けれど全力で疾走する朝霧と健二は信号のない小さな交差点を右に曲がる。と、目の前に校門が現れた。


「本当にすぐそこだ……」

「ほれ。感動してないでさっさと行くぞ」


 朝霧がそう言うと「言われなくても」と健二が言う。同時に健二が勢いよく校門を走り抜けていった。

 が、朝霧は、その瞬間とんでもない状況を目の当たりにする。

 それは、校門の奥にいる人物。と、その人物めがけて、よそ見をしながら走っている健二の姿──、


「け、健二。ちょっと待て!」

「え?」


 健二が走りながら後ろを向いた途端、ある人物とぶつかった。健二の体がベシッという音とともに後方に吹っ飛んだ。


「な、なんだ?」


 健二は、ぶつかった物の正体を確認しようと、目の前を見る。そこには短ランに身を包み、木刀を右手に持つ男がいた。その威圧感はまるで鬼がいたらこんな感じなのだろうと思わせるほど凄まじい。


「なに? 朝から喧嘩売ってるわけ?」

「あ? なんでお前なんかに喧嘩……」


 健二がそこまで言ったところで、朝霧が健二の口を手で塞ぐ。とっさの行動に健二が肩を震わせた。


「神宮寺さん。コイツこの学校にきてまだ間もないんですよ。多めに見てやってください」

「へぇ……」


 神宮寺と呼ばれる男はニヤリと笑う。まさに何かを面白がるような笑顔だった。


「やっぱり君、おもしろいね」


 そして朝霧にそう言い、スタスタと昇降口へ歩いていく。


「な、なんなんだ!? あの野郎は!」

神宮寺 洸大(じんぐうじ こうだい)。この学校の風紀委員長にして番長的存在。無能力者にして能力者に勝てる男なんて呼ばれてるらしいけど……大京学会の構成員ね。納得だわ」


 朝霧は遠のいてく神宮寺を睨みながらそう言う。

 アイツが国の裏側に精通する人物。まさか学校にそんな奴がいるとは……。


「大京学会?」


 深く考え込んでいたところに健二のそんな質問が聞こえる。おそらく心の声が漏れていたみたいだ。


「あっ、別に気にしないで。独り言だから……って時間やべぇ! 急ぐぞ健二!!」


 朝霧は、漏れた言葉を誤魔化すように健二を急かす。上手く誤魔化せたようで二人は、足早に校舎へと消えていった。

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