【第42話】コネ
「でもなぜそれを?」
朝霧が少し驚いていると、男も驚いたような声で聞き返してくる。
「あぁ……。俺達も黒崎学園の生徒だから……」
「そうなんですか!? 学年は……?」
「俺と結月は高2だけど……」
「俺もっす! まぁ俺は成績底辺クラスの第7クラスになったんですけどね……」
「…………俺もだよ」
少しばかしの沈黙が起こる。なんかこの人に悪いことしたかな? という気がしなくもない。まぁ実際、朝霧の余計な一言がこの沈黙を作り出したのだが。
「え、あっ……俺は篠崎 健二です」
沈黙に耐えきれなくなったのか自己紹介を始める。まぁ朝霧も正直、この沈黙に耐えれなかったので良かったと言えば良かった。
「お、俺は朝霧 疾風」
「私は夕霞 結月です」
「私は黒崎 氷花」
海龍やファンも自己紹介する。ファンの名前を聞いたときの健二の反応は言うまでもなくポカーンとしていた。
そんなことをしてるうちにバスが来る。昨日も見たthe昭和という感じのそのバスは、エンジン音をけたましくあげながらバス停へと停車する。バスの扉がガシャンと開いた。
「お? お客さんが少し増えたな。篠崎さん家のお孫さんも桜新町駅に行くんか?」
バスに乗車するなり、運転手がそう健二に聞く。
「そうですが……なんでですか?」
「そうなら桜新町駅付近まで送ってってやる」
バスに全員が乗り込むと、バスはガシャンと音をたて扉を閉めた。バスのエンジン音がけたましく鳴りだし、バスが動き出す。
「そういや、黒崎さんって黒崎学園長のお孫さん……?」
「そうですけど……。それがなにか?」
「い、いや……ちょっと気になりまして……」
そんなことを話していると、踏切にさしかかる。
「あれ? 昨日こんな場所通りましたっけ?」
「桜新町駅までならこっちの道の方が早いんだ」
運転手はそう言い線路沿いの道に入る。少しばかし走っていると、前から電車が走ってきた。これまたthe昭和的な一両編成の電車で、方向幕を使用している。踏切があったことや高架じゃないことから大体分かっていたが、リニアではないようだ。
「そういえば結月さん。公安委員会って知ってますか?」
「まぁ知ってるけどなんで?」
「私公安委員会に入るのが夢で……。黒崎学園に転入しようと言い出した理由も全国にある公安委員会の委員長さんがいると聞いていたからですし……」
「じゃあ楓ちゃんは、新人さんになるのか……。なんなら本部所属にしてあげよっか?」
「本部なんて私にそんな大役無理ですよ……って結月さんも公安委員会に入ってるんですか?」
「入ってるもなにも私が委員長だからね。ちなみに副委員長は黒崎だから」
「結月さんが委員長!?」
「驚くのも無理ないよな。こんなおてんば女が委員長なんて……ぐわぅっ!!?」
朝霧がそこまで言ったところで結月のかかとが朝霧のつま先にめり込んだ。バキバキと乾いた音がし、骨が折れたのではないかと錯覚する。
「ということは、楓ちゃんも能力者?」
「ま、まぁ……傷を治したり蘇生くらいしか……あとは……」
「蘇生!? 十分凄いじゃない!」
「と、とは言っても亡くなってから五分以内でないと……」
楓が、そこまで言ったところで結月は、携帯を取り出しどこかへ連絡する。
間もなく「のんちゃん? 人事なんだけど篠崎楓さんの書類ある? ……うん。その子。本部の方に異動ということで……。ありがとね~」と、話し出す。
楓はその様子を見ながら、かなりオロオロしていた。
「これでバッチリ」
「わ、私に本部の仕事なんて無理ですよ……? まだ中学生なんですし……」
「大丈夫大丈夫。私もいるし、他の中学生の子もいるからなんとかなるわよ」
「良かったな楓。本部の所属になりたいってずっと言ってたじゃん」
「そ、そうだけど……」
朝霧は、この様子を『コネ』を使うって、こういうことなんだなぁと足を押さえながら実感していた。バスはトンネルに入り、速度を上げる。少し走った後トンネルを抜けると、目の前に桜新町駅がわずかに見えた。
「さて、そろそろ到着だ」
運転手が、そう言った数分後駅の駐車スペースにバスは止まる。恐らくこのバス専用のバス停がないからなのだろう。
けど無許可でバスが停まるって法律とかに触れないのか? と、少し心配になる。
「行きも帰りもありがとうございます」
朝霧は、お礼をしバスを降りる。運転手は『今度は神社巡りでもしてやるからな~』と言いながら最後まで見送ってくれた。




