「さん」疑問の重力
はい!三話目です!書く事ないない!
◇1
三時間目の授業は社会だった。でも、全く頭に入って来ない。聞こうと耳を傾けても、ノートを取ろうとしても、何故か屈託する。
そのもやもやする感情の原因は、昨日脳に再生された夢の光景だった。そこは夜の公園で、私はブランコに腰を預けながら前後に揺れていた。錆が目立つ鎖を握り、キィキィと深夜に聞くと奇妙で恐ろしい音を奏でる。
そして、私の隣に鴨が笑いながら座っていた。ブランコの座席に立って勢いつけながら前後へ激しく揺れている。
その二人の光景を見ている私は、何故か切ない感情が襲って来て、ブランコで座りながらカメラを持っている私は、最近見せていない満面の笑みを見せていた。んだと思う。
頭を抱えて転がり回りたくなる様な透明な感情が、脳を圧迫する重力を伴って水が溜まっている様な感覚が襲来する。ちゃんと椅子に座っているのに、足元が不安定で歪んでいる様な幻覚が生じる。
教室の床が螺旋を描いて、私を飲み込んで行く。足が徐々に沈んで行き、恐怖を覚える。
「おーい。あーいちゃん。 授業終わったよー」
その時、誰かに肩を揺らされた。闇に淡い光が差し込み、夢だった事に気が着く。何だったんだよ。肩を揺すって来た人は、同じクラスの里奈だった。
レンズが大きい赤縁メガネの位置を直しながら、後ろで縛ってある黒髪を揺らす。「よだれ垂らして可愛い」里奈は微笑しながらからかって来た。むぅ。
何故だが足が萎縮して立ち上がる気がしない。なんでだろう?まさか本当に床に埋まってるんじゃないか不安になり、咄嗟に足元の方へ目をやる。良かった普通だ。
「なんだったんだろ、ホントに」
「んーなんか言ったかね」
最近、自分で思う位に変だ。味わった事のない感情ばかり襲って来て、挙句の果てに変な夢まで見る様になっていた。病院行かなきゃかな?
なんだろう、この気持ち?疑問ばかりで、煩悶するだけで、私はワタシと対峙して、答えは見つからないまま、新たな疑問が脳を蝕む。
「なんかさぁー最近変だよ?あいちゃん」里奈が心配そうな表情で私を下から覗く。やはり、みんなも気付いているのかな。
「え、何で?」
あえて惚けてみた。すると里奈が「なんかさぁー?今まで黙ってたけどさぁ・・・」そこで一瞬里奈が何故か躊躇を表す。
「なんか、最近、恋、、してるみたい、だよ?」
「へ?」
いきなり不慣れな単語が飛んで来た。一瞬で脳内は淡白となり、蹂躙される。本当に久々に聞いた単語だった。恋、かぁ。
「ど、どういう事?」
「もーっ誤魔化そうとしても無理がありますよ?」
里奈は肘先を私の左手にコツコツ当てながら「もー誰なんだじょ~」と楽しそうな表情で聞いて来る。益々脳内で渦を巻き、混雑から喉が詰まって噎せた。
私が恋?恋って何なんだろ?また疑問が一つ増えた。まず、私が異性と喋らないし・・・、淡々と心の中で呟く。
でも、何でだろう?
『恋』という単語を耳にした刹那、脳裏で何故か鴨の顔が浮かんだ。何で?益々疑問が増える。疑問に蹂躙されて浸かって行く。
足元が不安定で溺れて沈みそうな私は、また疑問が生じる。「あれ?」
なんで私、今鴨の事考えてるの? 「よん」に続く。
はい、この作品は夏休みに向かって期間限定で書くモノです。
リアル夏休みが終わると同時にこの作品が終わる事を望んでます。
しばしよろしくお願いします。