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合体忍者  作者: こげ太郎
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合体忍者 六


 六


「それで君は何なんだ?」赤忍者が言った。

 は?

 それで君は何なんだ、だと? お前らこそ何なんだ。お前らこそ何だったいうんだよ。聞きたいのはこっちだ。そうやって聞きたいのは明らかにこっちだろう。

「今から学校に行くんです」金剛朗は仕方なく答えた。そしてもう立ち去ってしまうつもりだった。こいつらだって休憩し始めちゃったんだもん。

 合体とか途中でやめにしちゃったんだもん。

 もうどうでもいいことだろう。早くこの場を立ち去ろう。この場を立ち去って、俺はいつもの教室に向かうんだ。いつもの教室に向かったってどんないいことがあるというのだろう。

 つまらない。

 あんな教室つまらないんだ。何もない。何もないただの部屋じゃないか。俺はあんなところに何をしに行っているというのだろう。何をしに行っているというのかな?

 いやに今日は懐疑的じゃないか。

 何を自分に問い掛けているというのかな? 俺はいきなり、何を自分に問い掛けているというのかな? 普通のことじゃないか。至って普通のことだろう。

 中学生が朝おきて学校に行く。

 いいじゃないか。これでいいじゃないか。この現実のどこに不満があるっていうんだ。どこに不満があるっていうのかね。

 やめよう。

 もう何も語るまい。何を語っても語らなくても、俺は学校に行くんだ。行くよりほかはないのだ。覚悟を決めろ。覚悟を決めて歩み出すのだ。 

 歩み出す? 

 そんなに大したもんじゃないだろう。だから何も語るなって。何も語らずにこの場から立ち去ればそれでいいんだ。立ち去ればそれで問題は何もないんだ。何もなかったことになるんだ。

 赤忍者が言った。「何で学校に行くの?」

 それは……

「え? なんでって普通学校に行くでしょ」金剛朗は答える。

「俺たちは行かないよ」

「そりゃそうでしょう」

「何で?」

「何でって……あんたたちはもういい大人でしょう」

「大人だけど行かないよ?」

「え? はい」

「うん。行かない」

 何だろう。話がかみ合ってない。

「卒業したからでしょう?」

 金剛朗が言う。「あなたたちは卒業したから、もう学校に行かなくてもいいんですよ」

「そうなの? 俺たち卒業してるの?」

「はい」

「何から?」

「学校から」

「学校から卒業してるの?」

「おちょくってるんですか?」

「いや別に」

「おちょくってるでしょう」

「おちょくってないよ」

「すみませんけど、本当にこのままだとすごい遅刻になっちゃうので行きますね。お礼とか特にいいですから、もうマジで行きますね」

「待てよ」

「何ですか?」

「待てよ!」赤忍者が強めに言ってくる。

「聞こえてますよ」

「ちょっと喋りにくいからこの被り物ゆるめるわ。待てよ!」

「待ってますって」

 被り物って、忍者が被ってるマスク? 赤忍者はそれののど元を布を緩めてしゃべりかけてきた。知らん。その被り物を普通に被っていると喋りにくいとか知らん。

「待ってんのかよ」

「待ってますよ」

 すると赤忍者は急に真面目な表情になって、「いいか? あのな、俺たちは忍者なわけ。わかる? 俺たちは闇の中を生きる忍者なわけね。だから俺たちの姿を見た奴を黙って逃がすわけにはいかないわけ。わかる?」

「何が言いたいんですか?」

「契約書に判を押してもらおう」

「契約書に判?」

「そうだ。君は今から俺たちの用意する書類に、今朝忍者っぽい人たちを見ましたけれども、話を聞いてみると彼らは特に忍者ではありませんでした、私は忍者なんて人たちは見ていません、という誓約書に判ををしてもらおう」

「そんなの必要なんですか?」

「ああ必要さ。これでもいっぱしの忍者なんでね」

 かっこ悪。

 いっぱしの忍者?

 じゃあ忍者なんてみんなバカなんだな。俺みたいな中学生に見つかるなんて、忍者なんてどうせみんなバカなんだろう。それとも、こいつらだけがめちゃくちゃダメな忍者たちってわけなのかな? だから合体とか? だから合体してみんなでそのダメなところを補おうっていう発想なのかな?

 しょうもない。

 とにかくこれ以上付き合うのはごめんだ。

 こっちには何のメリットもない。

 もうマジで駆け出してしまおう。駆け出して何もなかったことにするんだ。挙句の果てには誓約書に判を押してもらおう、だなんてわけのわからないことを言ってくるし。

 本当にわけのわからない人たちなのかもしれない。

 わけのわからない怖い人たちなのかもな。

 誰も関わりたがらないような。 

 さあ、マジでさっさと逃げよう。契約書に何て誰がサインしてやるもんか。知るか。俺はもう学校に行く。あんたたちのことなんて放っておいて、俺は学校に行くんだ。

 金剛朗が決意してその場から駆け出した瞬間だった、ものすごいスピードで五人の忍者たち全員に前方に回り込まれた。

 ものすごいスピード……まるで人間ではないような速さ……

「な、なんなんですか」金剛朗が驚いて言う。

「君こそ何なんだ。こっちは判をくれといっているのに」

 忍者。

 こいつらマジで忍者だっていうのか?

「シャチハタでもいいんだよ」

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