合体忍者 五
五
体を支えてやるっていうのはいいけどさ。
体を支えてやるっていうのはいいかもしれないけれども、でもそれって何のため?
赤忍者がしつこいから?
ピンクが必死に訴えてくるから?
そういうことじゃなくてさ。何か俺が言いたいのはそういうことじゃなくてね、あんたたち筋トレなんでしょ? 筋トレなんでしょ?
筋トレなんだったらさ、苦しいのあたりまえじゃない?
苦しいのって当然のことなんじゃないの。
それなのに助けってなんなの。なんなのさ!
腕がちぎれてしまいそうだから何とかしてくれって? 筋トレ失敗してるよね。それって筋トレ失敗してるよね。何? どうしちゃったの。
筋トレだ! と意気込んで、いきなり無茶な方法を選んじゃったの。
とてもできないようなトレーニング方法を実践してしまったってわけなの?
いいよ。
いいよ助けるけれども。
助けるけれども、筋トレとか、悪の組織とか言っていた人たちとしては、とてもじゃないけれどもダメだなと思って。とてもじゃないけれども、そんなことを言っていい人たちじゃないよね。
情けないよね。
あんたたちとっても情けないよね。俺マジで中学生だよ? そこらへんにいるようなただの中学生だからね? 別に忍者に憧れとかないし、悪の組織とかにも興味ないし!
俺今特別に興味あるものとかねーんだよ。
白けてんだよ。
俺今自分で何事にも白けた中学生やってんの!
マジで変な話に巻き込んでくれるなって。むかつく! ああなんかむかついてきた! 俺ジャンプとか真っ二つにできないけれども、真っ二つにできるくらいの腕力あったら真っ二つにしてやりたいわ!
何言ってんだ。
自分で俺何言ってんだ。白けるようなこというなよ。言わせるなよ!
むかつく。
学校行きたくねえ。
「あー、ちょっと合体は休憩してお茶飲むか。レモンティー飲む?」
忍者たちが何やら話し始めた。
こいつらときたら!
助けたとたんにこれだ。
合体をちょっと中断して休憩にしようというのである。で、その休憩でレモンティーを? どこからともなく持ち出してきたレモンティーで一服しようというのである。
急に地べたに座り出して、何か暑いわー、みたいな感じで手で顔を仰ぎながらペットボトルのレモンティーを飲み始める忍者たち。
何しとんじゃ。
お前らマジで何しとんじゃ。合体しかけていたのならば合体しろよ。筋トレの途中にレモンティーって何なん。レモンティーって何か筋トレに対して特別な効能とかあんの?
俺知らんけど?
そんな特別な効果があるとか俺そんなん知らんけど?
「君も一口飲む?」赤忍者が言った。
いらんわ!
そんなもんいらんわ! いらんっていうかもうマジで絶対いらん。あー、なめてる。こいつら俺のことなめてるんだろう。何かしょうもなさそうな中学生だから、こういう非日常的っていうか、シュールっぽい展開が好きなんだろう、はいはいレモンティーね、はいレモンティーどうぞ、みたいな感じなんだろう。
しっかり現実みつめる派!
俺確かにどこにでもいる白けた中学生だけれども、結構ちゃんと現実は現実としてみつめる派だから。そういうわけのわからん人たちとか展開とかそんなに好きじゃないから。
っていうか嫌いだから。
むしろ虫唾が走るっつーの。
おもしろいとでも思ってんのか。おもしろいとでも思ってんのかこのコスプレ集団め。
お前らみたいな奴らはやっぱりコスプレ集団なんじゃ。
コスプレ集団なのであって、本物の忍者とか、正義のヒーローとかそういうんじゃないんだろう。
なめやがって。
マジでなめやがって。絶対いらんからな、そんなレモンティーなんか。
そんなレモンティーなんか、もらった瞬間に口から噴き出してやる!
ピンクが言った。「ちょっとレッド―、あんたのペットボトルあげたら、この子があんたと間接キスしたみたいになるでしょ。そりゃ嫌がるわ。――私のあげるわ。私のだったら飲みたいと思うでしょ? さあ坊や、お姉さんとまさかの朝から間接キスよ」
お前ら全員の歯茎とけろ。