合体忍者 三
三
金剛朗は言った。「合体巨大忍者ロボって何なんですか。あなたたちだいたいロボじゃないじゃないですか」
「そう見えるかい?」赤い忍者服の男が言った。
「見えますよ。でも忍者には見えます。みんな忍者の格好をしていますよね。なぜなんです?」
「それは我々が忍者だからだ」
「忍者ですって?」
忍者なんてバカな。
今をいつの時代だと思っているんだ。戦国時代とか? 戦国時代とかだったら、まだ忍者という存在がいたかもしれないから、私は忍者だ、などと名乗ってもよかったのかもしれないけれども、今は戦国時代じゃないんだ。
今は平成なんだ。
大名とかいないんだぞ。県知事とかはいるけれども、県知事は別に忍者とかをやとったりはしないことだろう。
いつの時代だって、私は忍者だ、なんて名乗ってはダメなんじゃないだろうか!
そもそも忍者なんだから名乗ること自体ダメなのでは?
ダメなことなのでは?
だって忍者って隠密に行動しないといけないんじゃないのか。誰にもばれないように、影に生き続けないといけない職種なのではにだろうか。
それなのに名乗ってしまうなんて。
しかもこんな朝の時間に何をしているんだ。本当に何をしているんだか。
組体操ですか。
こんなところで唐突に組体操をやっているっていうんですか。わけわからん。まったくわけのわからん人たちだ。どうやってここに集まったんだ。
どこかで集合してからここにやってきたのか。
駅とか?
最寄りの駅とか? それともここに現地集合なのか。だとしたら、一番はじめにここに現れた奴の心境というものはどういうものだったのだろう。
そわそわしていた?
金剛朗は言った。「コスプレか何かですか?」
コスプレとかだったら可能性はあるのかなと思ったのである。
コスプレで忍者の格好とかする人っていると思うし。
「いやコスプレとかではないよ。我々は今から合体して巨大忍者ロボになるんだ」
「何のためにですか?」
何だか普通に会話をしている自分が恥ずかしい。何のためにですか、だって? 知らんがな。質問の答えをきくまえからそんなこと知らんがな。
俺何しているんだろう。
早く学校に行かないと。
こんな人たち放っておいて、早く学校に行かないと遅刻するんだって。
「悪の組織を倒すダメだよ。悪の組織を倒すために、我々は一刻も早く巨大忍者ロボにならないとダメなんだ」
「ならないとダメなんですか」
「そうだ、ダメだ」
「それでどうしろと?」
「ちょっとそこのピンクの肩をもってやってくれないか」
ピンク?
ピンクって何のことだろう。そう思って彼らのことを改めてみてみると、どうやら彼らはテレビの戦隊ものなのでよくある、例の五人組、赤、青、緑、ピンク、イエローなどに色分けされたグループらしかった。
何かの撮影だろうか?
テレビの撮影で、今ここでそんなことをしているっていうのか?
なんか面倒くさくなってきた。
急に面倒くさくなってきた金剛朗。「では僕は先を急ぎますので。さよなら」
「ちょっと待った!」
赤忍者が言った。「嘘! 今の嘘! 悪の組織を倒すために合体しなきゃならないとか嘘だよ」
「じゃあ何のためにそんなことしているんですか」
「筋トレ!」
筋トレ?
筋トレっすか……
そうか。なるほど。そうやって赤忍者を中心に、赤忍者の腕や足にほかの色の忍者が絡み付いていくその行為……筋トレっていうんですか。
しょうもな!
絶対にそっちの方が嘘やろ。筋トレやったらもっと普通のことやれ。もっとマシな方法あるやろ。
「では僕、マジで急がないといけないんで」
「ちょっと待ってよ」
「まだ何かあるんですか」
「嘘」
「嘘?」
「筋トレも微妙に嘘だよ。嘘というか、本当のことを言っていないというかね。だから、本当は、こうやって筋トレをして力をつけ、それで悪の組織を倒そうとしているんだ」
悪の組織は本当なんかい。
やっぱりしょうもないんじゃ、お前ら!