合体忍者 二
二
協力したくない金剛朗。
声をかけられた彼らに協力なんてしたくない金剛朗。
「できれば協力せずにこの場を通り過ぎたい」
金剛朗は、彼らに協力なんてしたくなかった。だいたい他人に協力なんてしていいことなんてあるのか。いままでいいことの一つでもあったというのか。
あったといえばあったような気がするけれども、なかったといえばなかったような気もする。
まああったかな。
他人に協力していいことって、多分あったと思う。
協力した人と友達になれたり、もしくは一緒に協力した人と話が弾んで、そのあとで何かいい情報をもらえたり、遊んでもらえたり、あと近所のおばちゃんだったりしたら! 何かお菓子をもらったことさえあるかもしれない。「さあ金剛朗ちゃん、今日はお掃除のお手伝いをしてくれたら、このお菓子をあげるわ。このお菓子はチョコレートクッキの中にさらにチョコチップを混ぜたものよ。名前はチョコチップクッキー」
チョコチップクッキー……
なんか、そんな遠い日の一日があったかも。
って!
だから、多分他人に協力をして、いいことっていうのはあるのだろう。
他人に協力していいことはあるのだ。
だが俺は嫌なのだ。
何が嫌なのか。
なぜ協力なんてしたくないのか。
教えてやろうか。それは、今この俺に助けを求めている奴らが、得体のしれない奴らだからだ! 得体のしれない、どこの誰とも知れない謎の奴らだからだ。
いや、まだそれだけだったらいいさ。
それだけだったらいいんだ。
問題は、何をしているのかまったくわけのわからない奴ら、ってことなんだ。
何をしているのかまったくわけのわからない奴らなんだぜ?
いきなり道の途中で、運動会の時のピラミッドみたいなことをしていやがる奴ら。一生懸命に互いの体にくっついて何かを形成しようとしていやがる奴ら。
そんな奴らにどこの誰が協力してやりたいって思うもんか!
少なくとも俺は思わないね。
俺は思わないんだからね。
まったくあんたたち本当に何をやっているんだ。朝っぱらからこんなところで何をやっているというのかね。何かの研究? 何かの研究なんだったら、もっと人目のつかない、人の迷惑にならないところでやってくれよ。
俺は遅れているんだって!
遅刻しかけているんだって。
そもそもあんたたちが得体の知れた人、どこの誰だかわかっている人で、目的もやっていることもはっきりとしている人たちだったとしても、俺は今学校に遅れそうだから、なるべく協力、手助けなんてものはしたくないんだよ。
協力なんてやっぱりしたくないね。
そりゃ人命とかがかかってたら別だよ?
おばあさんが倒れているとかそういうことだったら、もちろん何かできることはないかと手伝うけどさ……あんたたちは無理だよ。
あんたたちは嫌だ。
マジで俺には、なぜ今こうして道路の真ん中で立派な大人たちが男女入り乱れて群れているのか全然わからない。
「合体巨大忍者ロボになりたいんだ。さあ早く君も手伝って!」彼らの中心にいた、赤い忍者服? を着た二十代半ばくらいの男が言った。
なんだ、合体巨大忍者ロボって……
金剛朗は夢なのかな? と思った。
そうか。
これはまだ俺の朝の夢の続きの中なんだ。それにしても、合体巨大忍者ロボって――夢の中の出来事にしても、ちょっとお粗末すぎないか?
巨大忍者ロボって何なんだろう。
ロボって何なんだろう。
合体と忍者と巨大はまだ百歩譲ってありだとして、ロボはないだろう。あんたたちロボじゃないじゃん! あきらかに生身の人間じゃん!